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ロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術(RAPN)
ロボット支援腹腔鏡下膀胱全摘除術+腔内尿路変向術
ロボット支援前立腺全摘術(RARP)

ロボット支援前立腺全摘術(RARP)

ロボット支援根治的前立腺全摘除術とは


ダビンチXiシステム

  • 1) 限局性前立腺がんの患者様に対する手術です。前立腺と精嚢腺の摘除、尿道と膀胱を吻合するもので、早期の前立腺がんに対する有効性が確立された治療方法の1つです。開腹手術(恥骨後式前立腺全摘除術)に比して、傷が小さく痛みが軽度で、手術後の回復が早い、手術中の出血量が少ないなどの利点があります。癌の治療実績は従来の手術とほぼ同等です。
  • 2) 術後の回復が早い:多くの方が手術翌日に水分や流動物をとることができます。また、手術翌々日に立ち上がることができます。入院期間は術後7~10日間が通常です。
  • 3) 出血量が少ない:腹腔鏡手術により前立腺手術の難点である出血量について改善が得られています。当院ではこの手術法で術中に出血により輸血を施行した患者様はおりません。
  • 4) 前立腺周囲に走行している神経血管束(男性機能や尿道括約筋機能に関連)を温存することにより、術後の尿失禁や男性機能の保持・回復が早い傾向があります。当院では神経温存例で尿禁制が早く改善する傾向を認めるため積極的に神経温存手術(片側のみでも)を施行しております。

一方、「腹腔鏡下前立腺全摘除術」にも欠点があります。開腹手術の既往で腹腔内に癒着がある場合などは従来の開放手術の方が安全です。他にも、緑内障や手術体位の問題で本術式が採用できない方もおりますので主治医と相談して下さい。


手術治療の目的

早期の前立腺がんに対する有効性が確立された治療方法の1つです。癌が前立腺の外に出ていない、完全に治癒できる可能性がある時に行われます。保険適応となっている手術法には、恥骨後式、会陰式、腹腔鏡の3つのアプローチがあります。いずれの方法にも利点欠点はあります。今回施行する手術ロボット・ダビンチを用いた腹腔鏡下前立腺全摘除術は従来の腹腔鏡下手術における癌根治性と機能温存の精度を向上し、安全性を高めることが可能となり先進国ではスタンダードな術式となっています。我が国でも2012年4月より健康保険の適応となりました。


本手術の手順・注意点

  • 1) 腹部にポートを設置(切開穴は5-12mmで、全部で6カ所)
  • 2) 設置したポートや鉗子に手術ロボット・ダビンチを装着(ドッキング)
  • 3) 前立腺前面を剥離し膀胱との間を離断。
  • 4) 精嚢および精管の剥離
  • 5) 前立腺精嚢を摘除
  • 6) 前立腺と直腸前面との間を剥離(尾側、尿道方向へ)
  • 7) 尿道切断し前立腺全摘除を完遂
  • 8) リンパ節郭清(施行しない場合もあります)
  • 9) 膀胱尿道吻合(water-tightな縫合)
  • 10) 閉創
  • 11) 手術時間は概ね約2-4時間を予定しています。
前立腺全摘除後の膀胱尿道吻合
(ロボットの細かい動きにより確実な縫合が可能)

当科における実績

開腹手術は平成元年より当科にて200名以上の患者様に施行され、3年非再発率は82.6%で生存率は97.3%です。また平均出血量は580mlです。ロボット支援手術は2009年より開始し、2016年6月までに700例以上施行しております。


本手術の危険性

術中には出血、感染症(手術創、術後の呼吸器感染等)、直腸を含む周辺臓器の損傷(人工肛門造設および開腹手術の可能性)また、術後には尿失禁、吻合部狭窄および吻合部不全、尿瘻や性機能不全があります。稀れにみられる重篤な合併症として深部静脈血栓症による肺梗塞や輸血による合併症もあります。

1. 手術中・手術直後
*出血
骨盤内は血流が豊富でありますが、本手術は比較的出血が少なく300ml程度の出血が予想されます。予想以上の出血があった場合には、輸血が必要になることもあるかもしれません。(2016年6月までに、手術中に輸血を施行した方はおりません)
*周囲臓器損傷
1%未満とまれですが直腸、尿管を損傷することがあります。通常手術中に修復できますが、直腸の損傷ではごくまれに一時的な人工肛門が必要になることがあります。
*感染症
通常手術後2~3日は発熱します。発熱が持続する場合でも一般的には抗菌薬の投与で軽快します。また感染などにより傷が開くこともあります。5%程度の頻度で起こります。
*静脈塞栓
手術中、血管内(特に足の血管)で血の固まり(血栓)ができ、それが肺へ飛んで肺の血管を詰まらせる病気です。万一静脈塞栓が疑われた場合、血栓を溶かす薬を投与します。発症するのはきわめて稀れですが程度によっては命に関わることもあります。
— ダビンチによる神経温存手術 —
前立腺周囲の神経や血管を温存する事により、
術後の尿失禁や男性機能の回復が早期に期待できます。
2. 手術後
*尿失禁
尿道カテーテル抜去直後には、90%以上の方が尿もれ(尿失禁)を経験します。しかしほとんどの方は術後3ヶ月以内に改善し、ごく少量の尿失禁に対して尿パッドが必要な状態になります。非常に稀れですが、日常生活に支障をきたすような尿失禁が継続する場合、人工括約筋などによる治療法もあります。
*性機能障害
前立腺の外側方には神経血管束(勃起神経)が存在しこれを温存する事により手術後の尿禁制の早期の回復や性機能の改善が期待できます。これが癌の根治性を低下させる可能性もありますので、神経温存手術に関しては担当医とよく相談しご検討下さい。
*尿道狭窄
膀胱と尿道の吻合部が狭くなり排尿困難感が強くなることがあります。排尿困難が高度な場合には内視鏡的に拡げることもあります。

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