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尿路結石

腎・尿管結石とは

【尿路結石症の症状】

尿路の結石には腎結石、尿管結石、膀胱結石などがありますが、日本人の場合,ほとんどは腎または尿管の結石です。結石は腎臓にある場合には症状がないか、あっても鈍痛程度です。しかし、一旦結石が腎から尿管に下降すると疝痛発作という激烈な痛みを生じます。これは、腎盂内圧の上昇と、腎被膜の伸展、さらには腎盂の痙攣のため生じます。この痛みの経験のある方は、よくご存じと思います。疝痛発作は、朝方特に就寝中によく起こり、痛みを我慢できず病院に救急車で搬送されることもしばしばみられます。この痛みは腰背部、側腹部、下腹部などに広がり、しばしば吐き気を伴います。また、このような場合には血尿を伴うこともあります。


尿路結石はどのようにしてできるのか?

【自然に排石されるまでどのような経過をたどるのか?】

腎臓は血流の多い臓器で、多量の血液を常に濾過しナトリウム,カリウムといった体の維持に必要な体内の電解質を調節します。また、血圧調整や血液を産生するホルモンを分泌したり,骨の代謝に関連の深いビタミンDを活性化するなどの重要な役割を持っています。また尿素,クレアチニンなどの体内で不要となった代謝産物を尿中に排泄するという重要な役目を担っています。ここで作り出された尿の中には、カルシウム,蓚酸,尿酸,燐酸など尿路結石に関連する多くの物質が含まれ、排泄されています。
この結石に関連した様々な物質が、いろいろな条件の下で結晶化し大きくなったものが尿路結石です。非常に大きくなると、珊瑚状結石と表現します。痛みでよく知られる尿管結石は腎で作られた結石が下降したもので激しい痛み(疝痛)を引き起こします。

尿管には生来3カ所の狭いところが存在します。この3カ所とは、腎盂尿管移行部(腎臓から尿管への出口)、総腸骨動脈交叉差部(大きな血管を尿管がまたぐところ)、そして尿管が膀胱に入っていく膀胱尿管移行部で、ここがいわゆる関所となって、結石が通過しにくく、尿路閉塞を来します。尿管結石が膀胱近接部まで落下した場合は、膀胱を刺激するため、女性が引き起こしやすい膀胱炎と似た排尿終末時痛や血尿,頻尿を来すことがあります。一旦膀胱に結石が落ちると、尿道は尿管に比べて太いため、ほとんどは容易に尿道を通って体外に排出されます。男性の場合は、尿道を通る時に自覚症状を伴うために、結石を拾い上げることも可能ですが、女性の場合は尿道が短く排石したのを気付かないこともあります。まれに膀胱内で大きくなる場合や尿道に嵌頓して尿が出なくなることもあります。


尿路結石の診断

一般的には下記のような検査を行って診断します。

●尿検査
血尿や尿路感染の有無をみます。
●X線検査
単純なレントゲン写真だけでは診断がつきませんので、造影剤を使って腎臓や尿管を造影します。(排泄性腎盂造影:IVP、DIP)
●腹部超音波
X線に写らない結石(尿酸結石など)や腎臓の状態をみるのに適しています。

この他、CT 検査なども行うことがあります。
さらに、診断が困難な場合には、膀胱鏡を使用し尿管カテーテルを使って造影する逆行性腎盂造影(RP)を行いますが、少々大がかりな検査になります。


尿路結石症の出来やすい人とは?

尿路結石患者は正常人とどこが違うのでしょうか?下記のような特徴があげられます。

  • ・尿中に多くのカルシウムまたは蓚酸を排出する。(尿管結石の主な成分です)
  • ・尿中に多くの凝集した結晶が見られる。
  • ・尿中の結石阻止因子が欠乏している。あるいは尿中に結石促進因子が多い。
  • ・尿の停滞,感染,濃縮がある。
  • ・偏食が多い。一度に多く食べる(特に夕食)。
  • ・動物性蛋白、砂糖、牛乳の摂取量が多い。
  • ・水分の摂取量が少ない。
  • ・環境因子(暑くて発汗)が影響。
  • ・ストレスが多い。30~60歳の中間管理職。

結石の成分について

尿路結石の70%以上は蓚酸カルシウムを含んでいます。また、感染が主な原因である燐酸マグネシウムアンモニウムや、尿酸、シスチンは20%を占めています。


治療法について

1センチ以下の小さい尿管結石は水分を多く取り、運動することで自然に排石されます。また、腎結石は、症状がなく、感染を認めず腎機能に影響がないと判断される場合は経過観察で十分です。排石までに疝痛発作が繰り返す時や水腎症、腎盂腎炎が増悪する時は積極的に治療する方がよいでしょう。検査を行い、結石が尿とともに排出されるのが難しいと判断されれば手術を考える必要があります。手術といってもESWLという体外からの衝撃波で結石を細かく砕いたり内視鏡を用いる方法で治療します。

下記の治療法があります。

1.PNL(経皮的腎砕石術)について
腎臓に直接細い管を通し、内視鏡と各種の砕石装置を用いて結石を摘出します。腎臓の大きな結石などで行われ、ESWLと組み合わせて治療することもあります。
PNL(図)
2.TUL(経尿道的尿管砕石術)について
尿管鏡という細い内視鏡を用いて結石を確認し、各種の砕石装置によって結石を摘出します。経尿道的に尿管鏡を尿管内に挿入するため、下半身麻酔が必要で、4日間前後の入院が必要となります。ESWL後の破砕片が尿管内につまり石の道、いわゆる"stone street"が出来た場合や下部の尿管結石に対して実施します。また、ESWLによる治療効果が不十分な尿管結石なども対象になります。
TUL(図)
3.ESWL(体外衝撃波結石破砕術)について
ESWL(図)近年、体外衝撃波結石破砕術(ESWL)が開発され、結石の治療法が大きく変わり、ほとんど手術をすることがなくなりました。専用のESWL装置を用いて体外から結石を破砕します。この衝撃波は本来は潜水艦攻撃の兵器として考案されたものですが、実用化に至らず医療機器に応用され成功したものです。体外から水中、体内を通じて結石に焦点をあて衝撃波を連続的に打ち込み結石を破壊する方法です。麻酔は基本的に行いません。必要な場合は、鎮痛剤の静脈内投与のみ行います。1回の治療は1時間程度ですが、破砕効果が不十分な場合には再治療が必要となります。多くの結石はこのESWL単独で治療可能ですが珊瑚状結石や大きな腎結石の場合はPNLを併用することがあります。また下部尿管結石ではTULを併用した方がよいこともあります。比較的大きな結石を破砕したあとでは破砕片が尿管内につまり疝痛や発熱を来すことがありますので、前もって尿管内にカテーテルを留置します。排石が確認されればこのカテーテルは後日抜去します。
しかし、手術療法が完全に無くなったわけではありません。大切なことは、結石の原因をよく調べ、治療法を選択することです。

再発予防について

以下の事柄に気をつけてください。

1.水分摂取
・1日2リットルの尿量を維持すること(分割的な摂取および就寝前摂取)
・水分摂取の半分以上は飲料水とし他は番茶がよい。
過度のコーヒー、紅茶、コーラ、牛乳、ジュースの摂取はさける。
・アルコール摂取は過度にならぬようにし、就寝前に必ず飲水する。連日の摂取はさけること。
2.食事内容
・バランスのとれた食生活を行う。
・動物性蛋白、カルシウム、蓚酸、塩分、脂肪、糖分の過剰摂取はさける。
3.日常生活
・一度に多量摂取せず、朝、昼、夕食に分け栄養素を摂取する。
・適度な運動を実施し、発汗後は水分摂取のこと。
・ストレスを解消し十分な睡眠と精神的な余裕が必要。

外来受診について

結石再発の有無を調べるため3~6カ月に一度は定期検診が必要です。結石を繰り返す場合にはさらに詳細な原因の検査が必要となります。まじめに通院される方のほうが再発しにくいとの報告もありますので、ご留意ください。


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