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女性泌尿器疾患

女性泌尿器疾患(Female Urology)

骨盤臓器脱(POP)および腹圧性尿失禁(SIU)は女性特有の下部尿路症状(female LUTS)です。これらを正確に診断し、病態により最も相応しい治療法を選択するためには特定の検査が必要です。当院では特に“女性外来”の時間(月曜日午後3時以降)を設定し、医師だけでなく検査技師も含め女性のみで対応しております。


骨盤臓器脱(POP)

【骨盤臓器脱(POP:Pelvic Organ Prolapse)とは】

女性の骨盤内には子宮、膀胱、直腸などが収まっています。それらの臓器の位置が下がって、膣の中に落ち込み、外に飛び出す病気です。下がってきた臓器によって、子宮脱、膀胱瘤、直腸瘤などと呼ばれ、それらを総称して骨盤臓器脱と呼びます。

自覚症状としては、下腹部や外陰部の違和感、下垂感(出っ張ってくる感じ)が主ですが、頻尿や残尿感、排尿障害などの排尿症状が認められることも多く認められます。また、子宮筋腫等で子宮摘除術を施行された患者さんでも、治療が可能です。

イメージ図
【治療法】
1.治療法の基本的な考え方
骨盤臓器脱に対する治療は、脱落した臓器を摘出したり位置を矯正するのみでは不十分で、基本的には脆弱化した(伸びてしまった)骨盤底筋群全体をトータルに考えて補強する必要があります。
2.治療方法および注意点
【リング(ペッサリー)挿入】
膣内に円形の軟性化合物でできたペッサリーを留置します。根治的な治療(手術)が不可能な方にお勧めします。長期に留置しておくと感染は必発します。
【従来手術(子宮摘除+膣壁縫縮術)】
膣より脱出してくる子宮(および卵巣)を摘除し、膣壁縫縮します。膀胱と膣の間にあり膀胱を支えている膀胱膣中隔(恥骨頚部筋膜)を縫縮補強する前膣壁形成術を行います。体内に異物は残留しませんが骨盤底筋群が元々弱いために再発する可能性もあります。
【経膣的骨盤底形成手術(TVM手術)】
膀胱後面に人工線維(ポリプロピレン)メッシュを挿入することによって中隔(恥骨頚部筋膜)を補強する手術です。メッシュを使用従来手術に比べて明らかに再発が少なく良い手術ですが、すべての脱がこの手術のみで対応できる訳ではありません。むしろ行わない方が良い場合もあります。また、膀胱だけ、子宮だけ、が単独で脱出することは稀ですので、術後に直腸脱等の後壁脱をきたしたり、臓器脱が再発する可能性があります。将来、挿入したメッシュが膣壁に脱出してくることもあります。【下図のように、メッシュ(青色)を挿入します】
イメージ図
【仙骨膣断端固定術】
イメージ図 当科では主に子宮摘除後の膀胱脱患者様におすすめしております。膣の断端をポリプロピレンメッシュを用いて仙骨前面に固定することで骨盤底全体を挙上し固定する術式です。治療効果は高く、再発も比較的まれです。本手術は開腹または腹腔鏡を用いて施行します。当院は腹腔鏡下で本手術を施行する日本でも数少ない施設の1つです。腹腔鏡手術では創も小さいため術後の創痛も少なく、早期の社会復帰が可能です。しかし、腹腔鏡手術の場合、全ての患者様が再手術(子宮摘除術後)となるためいずれの治療をしても治療後(手術後)に尿失禁が悪化する可能性があります。特に腹圧性尿失禁は増加する傾向が見られます。これは下垂していた膀胱底や子宮により尿道が圧迫され尿失禁が抑制していたもので、脱を矯正することで元々隠れていた尿道の過活動による腹圧性尿失禁が顕性化するのです。そのため、多少なりともこのような症状がある患者様は必ず主治医と追加治療等に付きご相談下さい。
腹腔内の癒着によっては開腹手術に移行する可能性もあります。
【当科における実績】
平成17年より当科にて50名以上の患者様に施行され3年非再発率は95%で生存率は100%です。
3.本手術の危険性
術式により多少の違いはありますが一般的に排尿症状として尿路感染による頻尿、血尿、排尿困難、残尿感、排尿不快感、尿道痛、切迫尿失禁、排尿痛などが挙げられます。また、重篤な合併症として腸閉塞、敗血症、播種性血管内凝固、呼吸不全、ショック、感冒様症状、発熱等があります。また、メッシュを使用する術式では長期的にメッシュによる膣壁の潰瘍形成も否定できません。
4.メッシュ挿入治療前後の注意
退院後はふだんの日常生活は可能ですが、1ヶ月間は激しい運動、自転車、重い物を持つ、性生活などは控えてください。また時間の経過とともに、尿漏れが再発したり、テープの不具合が生じる場合があり、定期的な経過観察を行います。そのような場合は適切な追加治療を行います。また、テープが腟や尿道に出てくるようなことが生じた場合は再手術が必要になります。その際、尿失禁がひどくなる恐れがあります。

治療法は患者様各々の病態や年齢、病状や前回手術の有無等により決定されます。担当医と充分相談され、治療法を選択して頂きますようご検討ください。


腹圧性尿失禁(SUI)

【腹圧性尿失禁(SUI:Stress Urinary Incontinence)とは】

くしゃみや咳、重い物をもつ、階段を昇り降りするなど、お腹に力がはいると尿漏れをおこすのが腹圧性尿失禁です。腹圧性尿失禁は尿失禁のなかで最も多く、中高年女性の4人に1人に見られる症状です。骨盤底筋を強くする体操や薬を使う治療もありますが重症の尿失禁や確実に治したいかたは手術の適応となります。
手術で治療した場合、85%のかたが完全に尿漏れがなくなっています。

1.なぜ行うのか
尿道、膀胱などの臓器を支えている骨盤底筋という筋肉が、妊娠、出産、肥満、加齢によって弾力性を失いゆるむために尿が漏れやすくなります。骨盤底筋の固定を強固にするための手術です。手術で治療した場合、85%のかたが完全に尿漏れがなくなっています。
2.尿失禁手術の手順・注意点
【TVT手術】
イメージ図 膣からメッシュ状のテープを尿道の下に留置し、尿道を支えるようにします。お腹に力がかかってもこのテープが尿道を支えるため、尿漏れを防ぐことができます。
局所麻酔で手術を行うことができますが、下半身の腰椎麻酔を行うこともあります。手術は、膣と下腹部に合計3カ所、約1.5cmの傷で行いますが、術後は抜糸も不要で傷はほとんど目立ちません。局所麻酔の場合は、手術当日から食事や歩行も可能です。腰椎麻酔でも翌日から食事、歩行が可能になります。手術当日のみ尿道カテーテルを留置し、翌日にはカテーテルを抜去し、排尿に問題なければ術後2~3日で退院できます。
他に、閉鎖孔よりメッシュを出すTOT手術もありますが、保険適応になっておりません。
【当科における実績】
平成15年より60名以上の患者様に施行され尿失禁の3年非再発率は90%です。
3.尿失禁手術の危険性
合併症として、出血、痛み、感染(発熱や傷口の化膿など)、排尿困難、ときにまったく尿が出ない(尿閉)となる場合があります。排尿困難や尿閉を認めたときは、長めに尿道カテーテルを留置したり、導尿で対処しますが、局所麻酔をしてテープを少し緩める追加処置を行うことがあります。また、TVT手術後に切迫性尿失禁(トイレまで間に合わなくて下着が濡れる)を認めるかたがまれにいます。この場合はお薬で対処します。
4.本手術前後の注意
退院後はふだんの日常生活は可能ですが、1ヶ月間は激しい運動、自転車、重い物を持つ、性生活などは控えてください。また時間の経過とともに、尿漏れが再発したり、テープの不具合が生じる場合があり、定期的な経過観察を行います。そのような場合は適切な追加治療を行います。また、テープが腟や尿道に出てくるようなことが生じた場合は再手術が必要になります。その際、尿失禁がひどくなる恐れがあります。

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