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腎移植治療

腎不全の治療

腎臓は体の中の老廃物を排出する機能のほかに、血圧を調節したり、造血ホルモンを分泌したり、骨の成長に必要なビタミンを活性化するのに重要な役割を担っています。何らかの原因で腎臓に障害を受け、腎機能が正常の三分の一になった状態が末期腎不全です。このため、生きていくには腎臓の機能を補う治療が絶対に必要となります。

治療法は、血液透析、腹膜透析、腎移植の3つがあります。この中で複雑な腎臓の諸機能を完全に補うことが出来るのが腎移植です。 腎不全に対する最良かつ最高の医療が腎不全なのです。

なぜ、腎臓移植?

腎臓移植は他人の腎臓を移植することによって腎機能を改善させます。そのため腎臓移植を行い、手術後に移植された腎臓が十分働くようになれば、長期間にわたって健康な人と同等の生活が送ることができます。

欧米での科学的調査では、腎臓移植を受けるほうが透析で生命を維持するよりも長生きが出来る事が証明されています。

藤田医科大学での腎臓移植の特徴

藤田医科大学病院での腎臓移植の特徴は、腎提供者が死亡された第三者からの献腎移植(死体腎移植ともいいます)では件数は国内でもトップクラスであり、しかもその成績が極めて良好で、移植先進国である米国での移植学会など海外からも注目されている点にあります。また、生体腎移植の特徴は、糖尿病性腎不全や過去に心筋梗塞を経験されたハイリスクといわれる患者さん方が多いことにあります。また、高度の術前術後管理を要する血液型不適合移植(A型ドナー→O型患者さん、AB型ドナー→A型患者さんなど)やドナー特異的抗体を有するハイリスク腎移植にも積極的に取り組んでおり、生存率、生着率ともに通常と変わらない良好な成績をおさめています。最近ではご夫婦間の非血縁生体腎移植も増えています。

レシピエント・ドナーとなられる方の条件

  • レシピエントに移植手術に耐えられる体力があること。
  • 生体腎移植の場合、ドナーが健康で、腎臓機能に問題がないこと。
  • ドナーとレシピエントに悪性腫瘍、感染症などの病気がないこと。
  • 生体腎移植の場合、ドナー、レシピエントの年齢についての制限はありませんが、高齢になるほど条件は悪くなるので、一般には70歳ぐらいまでが目安とされます。
  • ドナーとレシピエントの血液型は、従来は適合していることが条件でしたが、移植医療の進歩で、不適合の場合でも生体腎移植が可能になっています。

生体腎移植の術前検査

ドナー検査

ドナーとなられる方にはまず、簡単な血液検査を施行します。これにより腎機能障害、感染症(B型肝炎やC型肝炎など)が否定されれば、次にあげられる画像検査を予定します。

  • 静脈性腎盂尿管造影(造影剤を使用したレントゲン検査です)
  • 腎シンチグラム(腎の左右差を見る為の検査です)
  • 3DCT(腎の血管の走行や本数を見る為の検査です)

これらはすべて外来で検査することが出来ます。

レシピエント検査

レシピエントの患者さんは全身のCT検査により移植後に問題となる病気の早期発見を行います。このため必要に応じて他の画像検査や消化管の検査などが加わる場合があります。

ドナーとレシピエントの適合性検査

通常移植の1週間から2週間前にドナー、レシピエントともにお互いの適合性を調べるHLAタイピングとダイレクトクロスマッチという血液検査を行います。この結果が免疫抑制治療の方法を決定する助けになります。

藤田医科大学での腎臓移植の実際

当院では移植を受けられた患者さんは私たちの家族と思って診療を行っています。健康問題から精神的な悩みまで患者さんの立場に立ったきめ細かい指導、管理をおこなっています。入院・外来に関わらず移植専門の医師(日本移植学会または日本臨床腎移植学会の認定医)が中心となってチームで患者さんに対応しております。
このため、24時間、365日いつでも緊急事態に対応ができ、種々の臨床検査や放射線検査体制も万全の備えがされています。移植のあとの合併症の治療などは他科との協力のもと腎迅速な対応が可能であり、移植腎生着率、患者生存率ともに良好な成績を保持しています。
また移植の手術の際には腎移植専用病室(腎移植センター)の設置により、個室管理のもと高質の術後管理を可能にしています。腎移植手術前後の経過については下記クリニカルパスを参考にしてください。
生体腎移植では腎臓提供者(ドナー)に対して腹腔鏡を用いた低侵襲手術で術後の疼痛軽減、早期退院(1週間以内)と社会復帰を腹腔鏡手術認定医のもと行っています。

入院から手術2日前まで
【生体腎移植の場合】
  • ドナー
    移植予定日の2日前に入院。
    移植予定日2日前には移植及び手術に関する説明を主治医より行います。
  • レシピエント
    移植予定日の約10日前に入院。
    移植前後の生活につき、オリエンテーションを行います。
    移植予定日2日前には移植及び手術に関する説明を主治医より行います。
【献腎移植の場合】

入院後緊急でCT撮影を行い術前状態の確認をします。
手術前に透析を必要とする場合もあります。
通常の場合緊急手術となりますので直前に移植及び手術に関する説明を主治医より行います。

手術前日から術後
【生体腎移植の場合】
  • ドナー(腹腔鏡手術の場合)
    術前日 夜9時以降は禁飲食
    術当日 朝9時頃手術室へ。帰室後は一般個室で適宜血圧、尿量を管理。
    術後1日目 朝または昼から飲水開始。夕から食事開始。
    腹腔鏡手術であれば多くの場合、術後第1、2日目には立位歩行も可能。
    術後5から7日目 退院。
  • 開腹手術で行う場合には、患者さんにより差はありますが術後の体力回復に4、5日入院が延長される場合が多いようです。
  • レシピエント
    術前日 夜9時以降は食事、飲水を控えていただきます。
    術当日 朝10時頃手術室へ。帰室後は専用の腎移植専用病室(腎移植センター)にて血圧、尿量を集中管理
    術後1日目 朝から飲水開始、おなかの状態を見ながら昼頃から食事を開始します。
    術後5から7日目 この頃には多くの患者さんは立位での歩行が可能となり、病室内で自由に活動する事ができるようになります。
  • その後、拒絶反応や感染症の治療で入院が長引く場合を除いて術後約1ヶ月で多くの患者さんは退院となります。
    退院後は1週間に1度の割合で外来通院開始、経過に伴い1ヶ月から1.5ヶ月に1度の外来通院となります。
【献腎移植の場合】

大まかな経過は生体腎移植と変わりませんが、献腎移植では術後平均10日前後腎臓が働かない無尿の期間があります。この間は腎移植専用病室(腎移植センター)にて個室の透析をおこない、腎機能の回復を待ちます。従ってその分、入院期間は長くなる事になります。

免疫抑制剤について

免疫抑制剤の種類と副作用

すべての免疫抑制剤に共通する副作用は免疫力が低下しすぎるために感染症にかかりやすくなることです。感染症以外にそれぞれの免疫抑制剤に特有の副作用があります。
免疫抑制剤のうち、カルシニューリン阻害剤の2種類は、どちらも強い免疫抑制効果があり効果はほぼ同じと考えられています。共通した副作用としては、腎臓に対する毒性があり、薬剤の適正な血中濃度を測定し必要に応じて減量を考慮します。また、シクロスポリンには高脂血症が比較的多く、タクロリムスには膵毒性による耐糖能異常(血糖上昇)が比較的多くみられます。
代謝拮抗剤には骨髄抑制の副作用があり、白血球の減少や貧血などがありえます。この他、セルセプトには下痢などの消化器症状、ミゾリビンには高尿酸血症、イムランには肝障害がほかの薬剤に比較して多いとされています。副作用の程度により、投与量の減量あるいは中止を行います。

ステロイドの副作用としては満月様顔貌(顔が丸くなる)や大量に使用した場合(拒絶反応の治療としてのステロイドパルス療法)に、胃十二指腸潰瘍が発生することがあります。また、少量のステロイドでも長期間内服すると白内障になったり骨がもろくなったりすることがあります。大腿骨の頭がつぶれて痛みが出ることがあり、この場合にはステロイドの減量とともに整形外科的治療が必要となります。そのため近年移植後はできるだけステロイドの内服量を少なくし、眼の状態や骨の状態を定期的に検査しています。

移植された腎臓が患者さんの体の中で正常に働くためには、拒絶反応を抑えるための免疫抑制療法が必須です。当施設における腎移植後の免疫抑制法は副腎皮質ホルモン(メドロール)、カルシニューリン拮抗剤(シクロスポリンまたはプログラフ)、代謝拮抗剤(セルセプトまたはブレジニン)、抗リンパ球抗体(シムレクト)の4剤を使用して、腎移植後早期には拒絶反応の出現を抑えるための充分な免疫抑制と安定期には速やかな減量によって、副作用を極力抑える免疫抑制法を行っています。

受診について

腎臓移植に関する更なる詳しい説明、または直接移植治療をご希望される患者さんは、まずは電話で受付にその旨お伝えいただき、外来に来られる日を予約してください。

泌尿器科外来を予約日に受診いただきますと、実際の患者さんの状況に応じた腎臓移植に関する具体的な詳しい説明をさせていただきます。
もし、腎提供をいただける方(ドナー)の候補が決まっている場合には、ご一緒に来院してください。腎臓移植に関する説明とともに今後の具体的予定を決定することも可能です。

お問い合わせ先

腎泌尿器科外来 TEL:0562-93-2180(直通)


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