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小児泌尿器疾患

小児製泌尿器疾患

膀胱尿管逆流症、水腎症、巨大尿管症、神経因性膀胱、前部・後部尿道弁などの尿路系疾患と性器系疾患としての、停留精巣、遊走精巣、陰嚢水腫、尿道下裂、真性半陰陽・混合性腺異形成・副腎性器症候群などの半陰陽、包茎などがあります。星長清隆教授は小児泌尿器科及び腎不全・腎移植を専門としており、診断から治療、術後外来でのフォローアップまで一貫したチーム医療を行います。


包茎

外来に来られる子供さんの中で、私たち泌尿器科医が最も多く対応する疾患に包茎があります。多くの場合、1歳、3歳時健診などで健診のお医者さんから“包茎ですから専門医に行って下さい”指摘された親御さんがお子さんを連れて来院されます。または他のクリニックにて手術が必要と言われ、セカンドオピニオンを求めて来られる場合もあります。多くの症例では受診日に処置(用手下での包皮の反転)が行われ手術を必要とすることはありません。しかし包皮の先端が狭いタイプや強い痛みを伴う場合は約2~4週間、副腎皮質ホルモンを含んだ軟膏を包皮に塗布することにより、包皮を軟らかくしてから包皮反転を試みます。殆どの症例では手術を必要としません。また包皮炎(包皮の反転部位に垢がたまり、感染を来した状態)を起こしてしまっている場合も無理に反転せず、抗生剤の内服投与と同様の軟膏により症状の軽快を促すことができます。包皮先端の強い癒着や比較的高学年の患児、包茎が原因で尿路感染症や膀胱尿管逆流(膀胱から尿が腎へ逆流する先天性疾患)などが発症している場合は手術を行う必要があります。小学校高学年以上の場合、外来にて局所麻酔下に包皮切開術を行うことが可能ですが、10歳未満の場合、全身麻酔下に同様の手術を行うため入院が必要となります。


停留精巣

男児100人中1人に認められるとされる精巣が陰嚢底まで降りない病気です。胎児期には精巣は腹部にあり、出生前に陰嚢まで降りてくるのですが、それが途中で留まってしまった状態です。原因はまだ解明されていません。生後6カ月を過ぎると自然に下降する可能性はまずありませんので(ただし移動性精巣の場合は除きます)、当院では時期をみて手術して降ろすこと(精巣固定術)を考慮します。陰嚢内に精巣がないことにより精細管の障害による不妊症の発生やガンになる可能性が通常の精巣に比べて高いと報告されていることから手術を比較的早期に行うようにしています。手術は鼠径部に約3cm、陰嚢に約1cm の傷が残りますが、吸収糸で縫合するため抜糸の必要性がなく、傷も下着で隠れるため美容上BODY IMAGEを損なうことはありません。麻酔は全身麻酔で行いますので、手術日の前後各1日を含め入院期間は3日間です。


夜尿症

夜尿症は5歳から6歳を過ぎても夜間睡眠中に無意識に排尿する状態をいいます。4歳で約30%、10歳でも約5%の子供に発生すると言われています。原因はまだよく分かっていませんが抗利尿ホルモン分泌障害、膀胱機能障害、自律神経障害、睡眠、覚醒障害、心理的ストレスなどがあげられています。また昼間のお漏らしを認めるような場合は膀胱尿管逆流症や二分脊椎といって膀胱の神経支配に異常を認めることがあります。治療はまず親御さんまたは本人におしっこ日記をつけてもらうことから始まります。またある程度大きなお子さんでは汚してしまったシーツやパジャマを自分で片づけるなど自覚を促す方法を行います。そして夜尿症は基礎疾患がない限り自然に治っていくものだということをご両親にわかってもらい、本人を安心させます。睡眠前の飲水制限などの生活指導を行った後、改善が見られなければ薬物治療を開始します。三環系抗うつ薬は大脳に対しては睡眠のパターンを変え、膀胱に対しては容量を増大させる作用があります。また抗コリン剤の追加によりさらに膀胱の余分な収縮をとることが期待できます検査が必要な場合もあります。


小児尿路感染症

幼少児期の発熱として注意が必要な疾患のなかに尿路感染を原因とする熱があります。炎症が膀胱に留まっているうちは発熱を来すことはありませんが、炎症が腎盂に波及すると38.5度以上の発熱をきたす急性腎盂腎炎と呼ばれる状態になります。子供の場合、成人と違い腎盂腎炎に特徴的な背部痛を訴えることは稀なため、診断が遅れがちになることが問題とされています。腎盂腎炎から敗血症を併発することもあり命の危険を脅かす危険すらありえます。診断は自覚症状を聞き出す事は6歳以下の場合殆ど不可能に近いため、尿中白血球数の増加や血液検査による全身の炎症反応の上昇など検査値に頼ることが多くなります。治療は一般的に起炎菌に適切な抗生剤の静脈内投与が行われますが、高度の膀胱尿管逆流症などを伴う場合は尿道留置カテーテルによる持続的な尿排出が必要となります。完全に全身状態が軽快した後もしばらくは抗生剤の内服投与を行い、原因疾患の検索が必要となります。


膀胱尿管逆流症

腎臓で作られた尿は、尿管を通り膀胱に到達します。膀胱にある程度の尿がたまると、排尿行為により尿は排出されます。本来一方通行のはずの尿の流れが、膀胱から尿管や腎臓に逆流する病気を膀胱尿管逆流症と言います。高熱を伴う尿路感染症として発症することが多く、感染により、腎瘢痕と呼ばれる傷を腎臓に残し、さらに感染を繰り返すと、腎瘢痕が増え、腎機能が悪くなります。重症では慢性腎不全に移行し透析や移植を必要とする場合もあります。確定診断は排尿時膀胱造影検査で行われ、膀胱に注入した造影剤が尿管や腎臓に逆流するかどうかを見ます。程度により5段階に分類されます。自然治癒する可能性のある病気ですので、一日一回の抗菌薬の服用で、感染を予防しつつ、自然治癒を待つという方法と、自然治癒が見込めないあるいは感染がコントロールできないなどの理由で手術を行う場合があります。


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