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前立腺肥大症

前立腺肥大症とは

おしっこが出にくくなる病気のなかで、比較的高齢の男性に頻度のたかいものです。これは前立腺にできた良性の腫瘍で、それを前立腺肥大症と呼びます。
前立腺肥大症は良性の腫瘍ですが、肥大した前立腺組織が後部尿道を圧迫すること、更に炎症、浮腫などが加わるために圧迫症状、刺激症状といった排尿障害をもたらします。この症状は大きさに関係なく起こりえます。また、小さい腫瘍であっても膀胱の出口をふさぐような場所にできますと(中葉肥大といいます)、強度の排尿障害をきたします。
最近、前立腺という言葉を耳にする機会が多くなりました。皆さんはお聞きになったことがありますか?これは臓器の名前で、特に50歳以上の方は、前立腺肥大症という言葉と共に御記憶頂ければよろしいかと思います。前立腺は男性にしかない臓器の名前で、膀胱の出口から後部尿道といわれる場所を取り巻いています。精液の一部を作り、精子の運動を高めて妊娠しやすくさせる作用をもっています。大きさは成人では胡桃大ですが、50歳以上のかたの場合、5人に1人は前立腺肥大症になるとされています。
夜おしっこに2回以上起きる、おしっこが出にくい、おしっこがしたくなったらトイレまで我慢できない、などの症状があったら要注意です。前立腺肥大症を含めた疾患の検索が必要となってきます。


前立腺肥大症の症状について

どのような症状がみられるのでしょうか?
特に50歳以上の男性で下記のような排尿障害が現れたら前立腺肥大症が疑われます。

  • ・尿が残る感じ(残尿感)がある
  • ・尿の勢いが弱い
  • ・排尿に時間がかかる
  • ・尿が途切れる
  • ・朝起きるまでに何回も排尿に起きる
  • ・排尿をがまんするのがつらい
  • ・排尿開始時にいきむ必要がある

このような症状があるときには泌尿器科医に御相談下さい。
ただし、以上のような症状があっても前立腺肥大症以外の疾患が原因の事もあります。例えば、脳梗塞や糖尿病、また腹部の大きな手術の後による神経異常が原因の場合があります。従来は、尿道の閉塞によって腎臓から膀胱への尿の流れが障害され、腎機能低下にまで至ることがあったため、発見次第、手術療法が適応されることが多かったのですが、現在では、前記のような状態に至ることが稀であるため、症状の軽減を治療の目的にするようになっていること、また、有効性の高い薬物が開発されてきたために薬物療法が主体となっており、(症状がごく軽度である場合には)経過観察のみということもあります。


泌尿器科を受診して

前立腺肥大症の診断に必要な諸検査を受けていただきます。
基本的には下記の項目から診断します。

  • ・問診(排尿についての自覚症状を所定の用紙に記入してもらいます。)
  • ・前立腺触診と神経学的検査(肛門から直腸診を行います。同時に神経の反射をみることもあります)
  • ・血液尿検査(前立腺がんとの鑑別のためにPSAという腫瘍マーカーを採血します。腎機能や尿所見の異常についても確認します)
  • ・経直腸的超音波(肛門から専用の超音波装置を使用して前立腺の大きさや前立腺がんの心配がないかをみます)
  • ・尿流測定(尿の勢いをみる検査とともに残尿がないかを確認します)
  • ・膀胱内圧測定(膀胱の中の圧力を測定して、膀胱が排尿するのに十分な力があるかをみます)

この他に尿道造影などのX線検査や内視鏡検査が必要な場合もあります。


治療方法について

治療法には内服治療と手術があります。手術が必要と判断された場合には下記のような各種治療法がありますので、患者さん毎に最も適切な治療法をお勧めしています。

薬物療法として、交感神経遮断剤や抗男性ホルモンが用いられます。いずれも、現在多種の薬剤が開発され、正常に日常生活を維持しつつ治療することが可能になっています。

前立腺肥大症に対する手術方法は年々新たな物が登場しています。現在、当科で施行している手術法は最もスタンダードな経尿道的前立腺切除術(TUR-P、図1)とレーザーを用いた前立腺核出術(HoLEP、図2)です。

TURPは既に70年を越す歴史を有し、安全で確立された治療手段ですが、時には輸血が必要な出血や、低ナトリウム血症といった合併症が起こり得ます。これらの合併症は前立腺が大きいほど起こる確率が高くなります。この合併症を軽減する方法としてレーザーを使用した前立腺治療が開発されました。1998年にはホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP)が初めて紹介され、治療成績はTURPと同等で、しかも合併症はより少なく、術後早期より社会復帰可能な方法として現在当院でも施行しております。HoLEP手術の特長は、血管をレーザーで丁寧に止血しながら手術を進めるので出血が少ないこと、大きな前立腺でも比較的短時間で手術できること、腺腫の取り残しがほとんどないので再発が少ないと予想されることなどです。これまで、100gを超えるような大きな前立腺肥大症の患者さんには、内視鏡手術が普及した現在でも、従来の開放手術が行われることが少なくなかったのですが、HoLEPでは、さほど困難なく100g以上の前立腺肥大症の手術を行うことができるようになってきております。


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