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ロボット支援腹腔鏡下根治的前立腺全摘除術(ダビンチ前立腺手術)

1)ロボット支援腹腔鏡下根治的前立腺全摘除術とは

  • 1) 限局性前立腺がんの患者様に対する手術です。前立腺と精嚢腺の摘除、尿道と膀胱を吻合するもので、早期の前立腺がんに対する有効性が確立された治療方法の1つです。開腹手術(恥骨後式前立腺全摘除術)に比して、傷が小さく痛みが軽度で、手術後の回復が早い、手術中の出血量が少ないなどの利点があります。癌の治療実績は従来の手術と同等です。
  • 2) 術後の回復が早い:だいたいの人が手術翌日に自力で歩くことができます。また、手術翌日に食事や流動物をとることができます。
  • 3) 出血量が少ない:腹腔鏡手術により前立腺手術の難点である出血量について改善が得られることが知られています。この手術法では他人の血液を必要とする輸血の確率は5%未満とされています。
  • 4) 症例によっては前立腺周囲に走行している神経血管束(男性機能や尿道括約筋機能に関連)を温存することにより、術後の尿失禁や男性機能の保持・回復が早い傾向があります。

ただし、「腹腔鏡下前立腺全摘除術」にも欠点があります。癒着がある症例や出血が多いと従来の開放手術の方が安全です。また前立腺癌の手術療法の欠点である「尿失禁」や「性機能の低下」がおこる割合も従来の手術と「腹腔鏡下前立腺全摘除術」では大差がないとされています。前立腺癌のコントロール(治癒の成績)に関しては、長い期間の成績が出ていませんので、確定的ではありませんが、これも大差ないと考えられています。ダビンチ(ロボット)を用いることにより、これらの欠点を改善した点が本術式の長所であり、それが原因で本術式が急速に全世界に拡大しています。

2)手術治療の目的

早期の前立腺がんに対する有効性が確立された治療方法の1つです。癌が前立腺の外に出ていない、完全に治癒できる可能性がある時に行われます。保健適応となっている手術法には、恥骨後式、会陰式、腹腔鏡の3つのアプローチがあります。いずれの方法にも利点欠点はあります。今回施行する手術ロボット・ダビンチSを用いた腹腔鏡下前立腺全摘除術は従来の腹腔鏡下手術における癌根治性と機能温存の精度を向上し、安全性を高めることが可能となり全世界ではスタンダードな術式となっています。

3)本手術の手順・注意点

  • 1)腹部にポートを設置(切開穴は5-12mmで、全部で6カ所)
  • 2)設置したポートや鉗子に手術ロボット・ダビンチSを装着(ドッキング)
  • 3)前立腺前面を剥離し膀胱との間を離断。
  • 4)精嚢および精管の剥離
  • 5)前立腺精嚢を摘除
  • 6)前立腺と直腸前面との間を剥離(尾側、尿道方向へ
  • 7)尿道切断し前立腺全摘除を完遂
  • 8)リンパ節郭清(迅速病理検査)
  • 9)膀胱尿道吻合(water-tightな縫合)
  • 10)閉創
  • 11)手術時間は概ね約2-4時間を予定しています。

【当科における実績】

開腹手術は平成元年より当科にて200名以上の患者様に施行され、3年非再発率は82.6%で生存率は97.3%ですまた平均出血量は580mlです。ロボット支援手術は2009年より開始し2014年末までに500例を施行しております。

4)本手術の危険性

術中には出血、感染症(手術創、術後の呼吸器感染等)、直腸を含む周辺臓器の損傷(人工肛門造設および開腹手術の可能性)また、術後には尿失禁、吻合部狭窄および吻合部不全、尿瘻や性機能不全があります。稀れにみられる重篤な合併症として深部静脈血栓症による肺梗塞や輸血による合併症(別紙)も有りえます。

1. 手術中・手術直後
●出血
骨盤内は血流が豊富でありますが、本手術は比較的出血が少なく200ml程度の出血が予想されます。予想以上の出血があった場合には、輸血が必要になることもあるかもしれません。(2014年末まで、手術中に輸血を施行した方はおりません)
●周囲臓器損傷
3~4%程度の頻度で直腸、尿管を損傷することがあります。通常手術中に修復できますが、直腸の損傷ではごくまれに一時的な人工肛門が必要になることがあります。
●感染症
通常手術後2~3日は発熱します。発熱が持続する場合でも一般的には抗菌薬の投与で軽快します。また感染などにより傷が開くこともあります。10%程度の頻度で起こります。
●静脈塞栓
手術中、血管内(特に足の血管)で血の固まり(血栓)ができ、それが肺へ飛んで肺の血管を詰まらせる病気です。万一静脈塞栓が疑われた場合、血栓を溶かす薬を投与します。発症するのはきわめて稀ですが程度によっては命に関わることもあります。
2. 手術後
●尿失禁
尿道カテーテル抜去直後には、ほとんどの方が尿もれ(尿失禁)を経験します。しかしおよそ9割の方は術後1-3ヶ月以内に改善し、ごく少量の尿失禁に対して尿パッドが必要な状態になります。日常生活に支障をきたすような尿失禁が継続する場合、コラーゲン注入などによる治療法もあります。
●性機能障害
原則として両側の勃起神経は前立腺といっしょに切除しますが、癌の浸潤が限られ患者さんの希望がある場合、勃起神経の温存を目指すことも可能です。
●尿道狭窄
膀胱と尿道の吻合部が狭くなり排尿困難感が強くなることがあります。排尿困難が高度な場合には内視鏡的に拡げることもあります。
●その他
この他にも手術に際しあなたの場合には下記のような併存疾患があるためいくらかの危険性を伴います。

手術は万全の注意を払って行ないますが、実際の手術では上記以外にも予想し得ない合併症が起こることがあります。万一そうした合併症が起こった場合でも速やかに適切な対応をとらせていただきます。実際の執刀は日本泌尿器科学会指導医または日本泌尿器科学会・日本泌尿器内視鏡学会 腹腔鏡技術認定医でかつda Vinci SまたはSi の使用にはIntuitive Surgical, incによる認定を受けた医師が行います。

腹腔鏡手術の短所、合併症

  • (1)腹腔鏡手術では、開放手術より手術時間が長めになります。また、大出血が起こった場合、開放手術より止血に手間取ることもあります。
  • (2)腹腔鏡手術では、操作が難しい場合や、出血、他の臓器の損傷などのために開放手術に変更しなければならないことがあります。腹腔鏡手術では難しいと考えられるときには、すぐに開放手術に切り替えることが、安全に手術を終えるために大切です。
  • (3)腹腔鏡手術には、次のような合併症の可能性があります。
【開放手術でも起こりうる合併症】
  • (1) 出血:輸血の可能性、大出血があった場合には創を開いて手術することがあります。
  • (2)直腸損傷:人工肛門が必要になる場合があります。
  • (3)尿失禁:通常は徐々に改善しますが、完全尿失禁になる危険もまれにあります。
  • (4)男性機能障害:勃起障害になることが多いです。
  • (1)から(4)は通常の前立腺全摘除術と同じです。

ダビンチ(ロボット)を用いることにより、これらの欠点を改善した点が本術式の長所であり、それが原因で本術式が急速に全世界に拡大しています。

費用負担に関して

平成24年4月1日より健康保険での手術入院加療が可能となります。
他にも解らないことなどありましたら、担当医にご相談下さい。


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