II. 脂肪細胞分化, 間葉系前駆細胞に関する再生医療研究と肥満・糖尿病


 近年、iPS細胞、ES細胞等の幹細胞の理解が急速に進んでいるが、脂肪細胞の起源は明らかにされていない。我々は、生体内の脂肪細胞の由来を明らかにするために、細胞表面マーカーを用いたFACSセルソーターによる微量細胞の単離と分化培養、蛍光多重染色など様々な先端的手法を駆使した研究を行っている。これまでに、骨格筋内に存在する脂肪分化能の高い新しい間葉系前駆細胞の同定に成功している。この細胞は骨格筋、脂肪細胞、心臓など組織の血管周囲の間質に多く存在する。ヒト組織においても存在を確認している。同定したPDGF受容体α陽性の間葉系前駆細胞は表面マーカーで分取可能であり、筋疾患における骨格筋脂肪変性、肥満・糖尿病、線維化疾患への再生医療的応用が期待できる。さらに、発見した間葉系前駆細胞は、BMP応答性で骨分化能があり、筋肉内で異所性骨分化を示す「進行性骨化性線維異形成症 (FOP) (筋肉が骨になる難病)」の病態にも関与する可能性がある。  脂肪細胞関連の研究としては、マイオスタチン阻害により脂肪組織の量が顕著に低下することに着目し、詳細な分子メカニズムの解析を行なっている。マイオスタチン阻害マウスの脂肪組織および骨格筋において、脂肪酸合成の律速酵素であるアセチルCoAカルボキシラーゼや、ミトコンドリアの量が顕著に変化する事を示した。走査型及び透過型電子顕微鏡観察を行い、脂肪細胞の体積の低下を確認した。マイオスタチン阻害した白色脂肪組織においてミトコンドリアの数が増加するという興味ある現象を発見した。独自に作製したマイオスタチン阻害マウスは高脂肪食による肥満に抵抗性であり、耐糖能が向上する事を示した。高脂肪食で誘導される脂肪肝形成にも抵抗性であった。マイオスタチンによる骨格筋、脂肪組織、肝臓の臓器間クロストーク機構が存在することが示唆される。探索研究で発見していたTGF-β 受容体ファミリーの一つのALK7 (activin receptor-like kinase 7)の生理的なリガンドとしてアクチビンB, ABが作用する事を報告してきたが、ALK7 が脂肪細胞分化に伴って発現誘導され、脂肪分化の良好な分子マーカーとなる事を見出した。

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