私たちはこれまで、臨床検体と培養細胞双方から肺がんに特徴的な遺伝子発現プロファイルに注目し、肺がん発生と悪性化、転移に関係する遺伝子や経路を単離してきました。また、新しいがん治療法である重粒子治療や、特異的ながん抗原抽出に向けた技術開発も行なっています。

  • 1)セラミドとがん転移

    私たちは、セラミド合成を介する肺がん転移機構の存在を示してきました。肺がんではCERS6と呼ばれるセラミド合成酵素が活発に活動をしています。その結果合成される代謝産物C16セラミドが、がん転移に必須なラメリポディアと呼ばれる構造体を形成して転移が引き起こされます。現在、この経路を標的とした肺がん治療薬を開発中です。



  • 2)POLD4発現異常とゲノムインスタビリティー

    私たちは、肺がんの一部で、DNA修復因子POLD4遺伝子の発現低下が起きていることを発見しました。発現低下の起きている肺がんでは、DNA修復能が低下していると考えられるので、種々の抗がん剤に対する感受性が高いと考えられます。現在、この仮定の下、抗がん剤効果予測システムを構築中です。

  • 3)がん幹細胞とがん治療

    がん幹細胞仮説は、がん組織中で大多数を占める非がん幹細胞、あるいは、培養細胞を用いた研究に基づくこれまでの知識を根底から見直す必要性を提起しています。特に、従来の抗がん剤は非がん幹細胞を主たる標的とする可能性があるため、肺がん幹細胞特性を規定する因子を同定しそれを分子標的とする薬剤開発を目指す研究を行っています。

  • 4)重粒子線に特徴的なDNA損傷

    重粒子線治療は、従来のX線による放射線治療では効果が出にくいタイプのがんにも効くことが明らかとなっています。私たちは、重粒子線が複数の染色体間にまたがる広範囲で複雑なDNA損傷を引き起こすことを明らかにしました。同じ線量のX線ではこうしたDNA損傷ほとんど観察されません、この特徴的なDNA損傷が、効率的にがん細胞を死滅させていると考えられます。

  • 5)病変局所で産生される抗体の解析

    種々のがんを含め、慢性炎症の病変部には沢山の抗体産生細胞が浸潤していますが、これらの細胞がどのような抗原に対する抗体を産生しているのか、ほとんど明らかではありません。病変部で産生されるわけですから、疾患に関連した抗体の産生が強く疑われます。これら病変部で産生される抗体を解析することで、病気の診断や治療、あるいは原因の理解に役に立つ抗体や抗原を見つけるための研究を酵素抗原法という手法を用いて進めています。




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