Q&A - 食物アレルギーの疫学
食物アレルギーとはどんな病気ですか?
- 食物またはその成分(アレルゲン)の侵入によってアレルギー症状が引き起こされる現象が食物アレルギーです。
- 自己申告によれば、0~17歳の食物アレルギー有症率は6.9%、成人は5.1%となり、多数の方が罹患しています。特に2歳以下の食物アレルギー患者が64.5%を占める、小児に多い病気です。
- 日本においては鶏卵、牛乳、小麦で全体の72.5%を占めており、この3抗原は乳幼児で特に多くなっています。
- 食物アレルギーの症状は皮膚に出ることが多いですが、10.4%はショック症状が出現しています。
(引用: 食物アレルギー診療ガイドライン2016)
何かの食材で食物アレルギーを発症すると、他の食材でも食物アレルギーを発症しますか?
- 例えば鶏卵アレルギーの患者さんが、牛乳・小麦と原因や症状を変えて次々とアレルギー症状を発症する「アレルギーマーチ」という現象が確認されています。昨今の研究では、皮膚バリア機能の低下がアトピー性皮膚炎や食物アレルギーの発症リスクを上昇させることがわかってきています。つまり、皮膚からアレルゲンが侵入しやすい状態が、炎症を増強し、異なる食材で次々アレルギーを引き起こす原因と考えられてきています。
- 皮膚バリア機能を低下させないよう、スキンケアが食物アレルギーの予防・抑制に重要であることが再認識されています。
(引用: 食物アレルギー診療ガイドライン2016)
病院でもらったIgE抗体検査値が陽性の食材がありました。食べないほうがよいのですか?
IgE抗体検査は、血液中の食物アレルギーを引き起こす原因の一つであるアレルゲン特異的なIgE抗体が存在するかどうかを指標として判定しています。しかし、アレルギー症状を引き起こすかどうかは、その他種々の要因が関わってきます。したがって、IgE抗体検査が陽性であっても、皮膚試験、食物経口負荷試験を併せて確認し、医師との相談の上、必要最小限の除去にすべきとされています。
(引用: BMLホームーページ)
病院でもらったIgE抗体検査値が陽性の食材がありました。食べないほうがよいのですか?
現在の研究で、生後6か月までにスキンケアを行って皮膚の状態を良好にした小児において、鶏卵を少量ずつ摂取したことにより、鶏卵アレルギーの発症を抑えたという報告があります。完全に除去するよりも早期に少量ずつ摂取した方が有効との研究結果ですが、自己判断で摂取を開始するのではなく、必ずかかりつけの小児科医・アレルギー専門医に相談した上で離乳食を進めてください。
食物アレルギーは治りますか?
- (旧)茶のしずく石鹸が原因で発症した小麦アレルギーは、その石鹸の使用を中止することで多くの方が小麦を摂取できるようになりました。しかしこの例を除き、さまざまな研究が行われていますが、成人の食物アレルギーを治す方法は確立されていません。
- 一方、小児の患者さんは、就学前に寛解(生活に困らない量を摂取できる)を迎える方が多く、鶏卵では6歳までに66%が寛解しています。また免疫療法の実施により、早急に寛解を迎える方や、寛解とならなくても摂取可能量の上昇が認められる方もいます。
- 近年では、スギ花粉症、ダニアレルギーの減感作治療薬が販売されており、アレルギーが治る時代が目前のところまで来ているのかもしれません。
食物アレルギーについてはまだ不明な点もあり、研究が日夜すすめられています。お一人お一人の状況が異なりますので、詳しくは、アレルギー専門医にご相談ください。