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泌尿器科に関する病気、症状について分かりやすくご説明します。

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小児泌尿器疾患

小児泌尿器疾患

膀胱尿管逆流症・水腎症・巨大尿管症・神経因性膀胱・後部尿道弁などの尿路系、停留精巣・遊走精巣・陰嚢水腫・尿道下裂などの性器系の先天疾患や包茎などがあります。佐々木ひと美教授は小児泌尿器科および腎不全・腎移植を専門としており、診断から治療、術後外来でのフォローアップまで一貫したチーム医療を行います。

包茎

外来に来られる子供さんの中で、私たち泌尿器科医が最も多く対応する疾患に包茎です。多くの場合は健診のお医者さんから“包茎ですから専門医に行って下さい”指摘された親御さんがお子さんを連れて来院されます。または他のクリニックにて手術が必要と言われ、セカンドオピニオンで来られる場合もあります。多くの症例で手術を必要とすることはありません。包皮の先端が狭いタイプや強い痛みを伴う場合は副腎皮質ホルモンを含んだ軟膏を包皮に塗布することにより、包皮を軟らかくしてから包皮反転を試みます。また包皮炎(包皮の反転部位に垢がたまり、感染を来した状態)を起こしてしまっている場合も無理に反転せず、抗生剤の内服投与と同様の軟膏により症状の軽快を促すことができます。包皮先端の強い癒着や包茎が原因で尿路感染症や膀胱尿管逆流(膀胱から尿が腎へ逆流する先天性疾患)などが発症している場合は手術を行う必要があります。中高学年以上は外来にて局所麻酔で包皮切開術を行うことが可能ですが、小学生以下の場合は全身麻酔で手術を行うため入院が必要となります。

停留精巣

男児100人中1人に認められるとされる精巣が陰嚢底まで降りない病気です。胎児期には精巣は腹部にあり、出生前に陰嚢まで降りてくるのですが、それが途中で留まってしまった状態です。原因はまだ解明されていません。生後6カ月を過ぎると自然に下降する可能性はまずありませんので(ただし移動性精巣の場合は除きます)、当院では時期をみて精巣を陰嚢内に降ろす手術(精巣固定術)を考慮します。精巣が陰嚢内に収まっていないことで①精細管の障害による不妊症の発生や②ガンになる可能性が通常の精巣に比べて高いと報告されていることから手術を比較的早期に行うようにしています。手術は鼠径部に約3cm、陰嚢に約1cm の傷が残りますが、吸収糸で縫合するため抜糸の必要性がなく、手術の傷は下着で隠れるため美容上のBODY IMAGEを損なうことはありません。麻酔は全身麻酔で行いますので、手術日の前後各1日を含め入院期間は3日間です。

夜尿症

夜尿症は5歳から6歳を過ぎても夜間睡眠中に無意識に排尿する状態をいいます。4歳で約30%、10歳でも約5%の子供に発生すると言われています。原因はまだよく分かっていませんが抗利尿ホルモン分泌障害、膀胱機能障害、自律神経障害、睡眠、覚醒障害、心理的ストレスなどがあげられています。また昼間のお漏らしを認めるような場合は膀胱尿管逆流症や二分脊椎といって膀胱の神経支配に異常を認めることがあります。治療はまず親御さんまたは本人におしっこ日記をつけてもらうことから始まります。またある程度大きなお子さんでは汚してしまったシーツやパジャマを自分で片づけるなど自覚を促す方法を行います。そして夜尿症は基礎疾患がない限り自然に治っていくものだということをご両親にわかってもらい、本人を安心させます。睡眠前の飲水制限などの生活習慣の見直しを行った後に改善が見られなければ治療を開始します。治療にはアラーム療法と薬物治療(デスモプレシン療法)があります。アラーム療法は作用機序が不明な点がありますが睡眠中の蓄尿量が増大し、治癒率は62~78%とされています。薬物治療はデスモプレシンを使用します。デスモプレシンは腎臓での水の再吸収を促進させることで尿量を減らす作用があり、寝る前に内服することで夜間尿量を低下させて夜尿が改善する治療です

先天性水腎症

先天的な腎と尿管の通過障害により腎盂が拡張した状態で、近年は胎児期や検診の超音波検査で発見されることが多いです。水腎症の評価は超音波検査とRI検査を行い、水腎症の大きさ(図1)と腎から膀胱への尿の流出が良いかどうかを判断します。軽度であれ経過観察します。高度の水腎症で腎機能が低下や腎から膀胱への尿の流出不良、感染のコントロールできない場合で手術を行います。当施設での手術治療には開腹手術・ロボット支援手術があり、手術方法の選択は症例に合わせて行っています。

図1 SFU(Society Fetal Urology) 分類による水腎症のgrade 小児先天性水腎症 診療手引き2016より

膀胱尿管逆流

腎臓で作られた尿は、尿管を通り膀胱に到達し、膀胱にたまった尿は尿道から排出されます。本来は一方通行の尿の流れが、膀胱から尿管や腎臓に逆流する病気を膀胱尿管逆流と言います。高熱を伴う尿路感染症を発症することが多く、腎瘢痕と呼ばれる傷を腎臓に残ることがあります。さらに尿路感染を繰り返すと腎瘢痕が増えることで腎機能が悪くなり、重症では慢性腎不全に移行し透析や移植を必要とする場合もあります。確定診断は排尿時膀胱造影検査で行われ、膀胱に注入した造影剤が尿管や腎臓に逆流することを判断します(図2)。軽度であれば自然治癒する可能性があり、少量の抗菌薬の服用で感染を予防しつつ経過観察します。自然治癒が見込めない重度や感染のコントロールできない場合で手術を行います。当施設での手術治療には経尿道的手術・開腹手術・腹腔鏡手術があり、手術方法の選択は症例に合わせて行っています。

図2 膀胱尿管逆流の国際分類 小児膀胱尿管逆流 診療手引き2016より

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