No.090

各種抗生剤に対する臨床分離株の感受性率の推移
名古屋大学医学部附属病院検査部
○鈴木香織 斎場真紀 青田菜美 川村久美子 日紫喜芳美 奈田俊 山本秀子 森下秀孝 飯沼由嗣
【目的】
我々の検査室での薬剤感受性試験は、Microscm Walk Awayによる微量液体希釈法とディスク法(BBL)を併用し、1993年8月から同じ薬剤の組み合わせパターンを使用してきたo過去5年における検出菌の抗生剤に対する感受性の変化を把握する目的で各種臨床材料からの主な分離菌の感受性率の推移にっいて調査を行ったので報告する。

【方法】
1994年1月から1998年12月の期間に 当検査室に提出された各種臨床材料からの 分離菌の感受性率の年次変化を調査した。

測定機器は主にMicroscan Walk Awayで、使 用パネルはグラム陽性球菌用としてPosコン ポパネル2J、腸内細菌用としてNegコンポパ ネル3J、ブドウ糖非発酵菌用としてNegコン ポパネル4Jである。対象とした菌種はグラ ム陽性球菌6菌種(Staphylococcus aureus, MRSA,coagulase negatice Staphylococcus, Enterococcus Faecalis,Enterococcus faecium, Streptcoccus pneumoniae)、腸内細菌7菌種 (Escherichia coli,Klebsiella pneumoniae,Klebsiela oxytoca,Serratia marcescens,Enterobacter cloacae,Citrobacter freundii,Proteus mirabilis), 非発酵菌3菌種(Pseudomonas aeruginosa, Stenotrophomonas maltophilia,Acinetobacter calcoaceticus)である。S.pneumoniaeについてはNCCLS法によるディスク法で行った。感受性試験で判定が感受性(S)を示す株の割合を感受性率とした。

 【結果】
感受性率の年次推移で、耐性化傾向は.Spneumoniae-PCG,MPIPC,ABPC,EMとP.mirabilis-FOMでみられた。逆にS.aureus-EMとE.faecalis-ABPC,OFLXとE.faecium-IPMの組み合わせで感受性化の傾向がみられた。MRSAはMINO,GMに対して50%の感受性率でありVCM,STに対しては100%であった

。E.faeciumは、E.faecalisに比較して各種薬剤に耐性であった。E.colo,K,pneumoniae,K,oxytocaはセフェム系剤には良好な感受性を保っていたがK,oxytocaはCEではやや感受性が劣っていた。S.marcescensではCEZ,CTM,ABPC,CCLが10%以下、その他の薬剤は70%以上であった。E.cloacaeはCTM,ABPC,CMZ,CEZ,CCLが20%以下、その他の薬剤には60%以上であった。P.mirabilisはMlNOに対して10%以下であり、FOMに対する感受性率の低下が目立った。

P.aeruginosaはAMK,TOB,PIPCでは90%程度で、IPMでは70〜80%に留まった。S,maltophiliaは MINO,STに対して90%以上を示したが、 SBT以外のβ-ラクタム系剤に対しては40% 以下であった。

【考察、まとめ】
ペニシリン耐性肺炎球菌 (PRSP)の増加が問題視されているが、当院 においてもS.pneumoniaeはPC系薬剤にここ 5年間に20%程度の耐性化傾向がみられた。
 ブドウ球菌、腸球菌、腸内細菌、非発酵菌.の感受性率に大きな変化はみられなかった が、これらの情報はEmpiric therapyの判断材 料として有用であると考えられる。

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