研究内容 of 藤田保健衛生大学・総合医科学研究所・分子遺伝学研究部門

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藤田保健衛生大学 総合医科学研究所 分子遺伝学研究部門
Division of Molecular Genetics. Institute for Comprehensive Medical Science. Fujita Health University.



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(1)染色体の構造異常(転座、欠失)の発生メカニズム

染色体の構造異常の発生は外的・内的要因による2重鎖DNAの切断と、その誤った修復によって発生し、ランダムなできごとであると考えられてきましたが、近年、ある種の規則性がある可能性が提唱されてきました。わたしたちは、その先駆けとして、生殖細胞系列で繰り返し発生する染色体転座t(11;22)(q23;q11)の発生メカニズムについて研究しています。このt(11;22)の転座保因者は健康ですが、不妊症であったり、流産を繰り返したり、子が不均衡型転座による11/22混合トリソミー(エマヌエル症候群)を発症したりします。 わたしたちは、このt(11;22)の11番,22番染色体上の転座切断点にはAT含量の高い回文配列(Palindromic AT-Rich Repeat:PATRR)が存在することを発見しました。わたしたちは、精子形成過程でPATRR配列が「十字架型DNA」という不安定なゲノム2次構造をとることが、この反復性の染色体転座の原因であることを提唱しています。その後、t(11;22)以外の染色体転座の切断点からも次々とPATRR様の配列が同定されてきて、このメカニズムは他の多くの染色体転座の発生にも関与していることが示されています。こうした「non-B DNA(特殊2次構造のDNA)」による染色体再構成のメカニズムはこの分野のひとつのトピックであります。

わたしたちはこのような研究を、厚生労働省の難治性疾患克服研究事業「エマヌエル症候群研究班」を立ち上げて全国規模での研究を展開しています。

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FISHによる転座の同定

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十字架型DNA(原子間力顕微鏡)





(2)染色体の数的異常(異数体、不妊・不育)の発生メカニズム

染色体の異数性は、ダウン症候群をはじめとする先天性染色体疾患の原因であると同時に、妊娠初期における自然流産の半数以上は染色体の異数性によっておこると考えられています。このような新生児や胎児の染色体の異数性は、おもに精子や卵子の染色体の異数性によって発生します。精子や卵子の染色体は、減数分裂と呼ばれる過程において、正確に分配されます。第一減数分裂の前期にはペアリング、対合、組換え、コヒージョンなどの染色体動態に関わる重要な現象がおこり、これらのうちどれが欠陥しても染色体の異数性が発生することが想定されます。ノックアウトマウスなどのモデル生物の解析から、このしくみは男性と女性で大きく異なることがわかっており、男性におこった場合は精子発生が中断されますが、女性におこった場合は、異数性の卵子はある程度は維持され排卵されるようです。このことから 、第一減数分裂の前期に働く遺伝子の異常は、ヒト不妊症(無精子症)や不育症(習慣流産)の原因となる、という仮説がなりたちます。私たちは不妊・不育症の原因遺伝子を同定するために、第一減数分裂の前期に働く遺伝子の機能解析や、不妊・不育症での遺伝子解析をおこなっています。

実際、相同染色体の対合に関わるSYCP3遺伝子の変異は、ヒトで女性におこると習慣流産になり、男性におこると無精子症になるようで、男女間でチェックポイントの厳密さに大きな違いがあり、第1減数分裂パキテン期チェックポイント遺伝子のノックアウトマウスの解析もおこなっています。


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マイクロアレイによる発現解析

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第1減数分裂前期特異的発現
(in situハイブリダイゼーション)

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パキテン期の染色体像とXY body





(3)周産期疾患の遺伝学

少子化、晩婚化に伴う母体の高齢化、さらには生殖医療技術の進歩も相俟って、周産期疾患の研究は重要度を増しています。わたしたちは、染色体異常に起因する不妊・不育症のみならず、受精障害など他の原因による不妊症、流産、早産、子宮内胎児発育遅延、妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)などをターゲットにして研究をすすめています。

胎盤性抗凝固因子であるアネキシンA5遺伝子のプロモーター領域のSNPは習慣流産と関連します。高リスク型の場合、アネキシンA5の発現が低く、胎盤内の過凝固による習慣流産(不育症)になると想定されます。よって、患者さんはまずアネキシンA5の遺伝子検査を行い、高リスク型の場合には抗凝固療法をおこなう、というような戦略が期待でき、いわゆるゲノム情報を利用した個別化医療(オーダーメイド治療)につながると期待されています。


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                          アネキシンA5遺伝子のハプロタイプ解析






(4)その他

学内外の多くの研究チームとの共同研究を立ち上げ、マイクロアレイを用いた発現プロファイリングによる各種疾患の新規診断マーカーの同定や、SNPやCNV解析による多因子遺伝性疾患のゲノムワイドの疾患感受性遺伝子の同定をおこなっています。また、最新のテクノロジーも順次取り入れて研究をおこなっており、エクソーム解析による疾患の原因遺伝子の同定も開始しました。

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SNPチップによるホモ接合性マッピング

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エクソーム解析におけるエクソン濃縮

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次世代シーケンサーによる変異の同定