2010年度: 医療を考えるセミナー (選択必修式)


[教育目標]  [学習目標]  [授業形態]  [学生クラスリーダー、副リーダーの役割]
[付録]  [評価]  [コーディネーター]  [担当教員・テーマ・サマリー]  [教科書等]

 
[教育目標]

  現代医療のかかえるさまざまな問題点を医療者の一人として深く考え、議論し、理想と現実の違いを知ることを通じて、よりよき医療者をめざすモチベーションを高める。
 
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  [学習目標]
 
1.
現代医療の抱えるさまざまな問題から自ら選択し、積極的に問題を捉えて議論に参加する。
 
2.
医療各分野の専門家あるいは当事者の問題提起を受け止め、自分の問題として真摯に考え、調べたうえでレポートにまとめる。
 
3.
将来、プロの医療者として働く自覚を高める。
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[授業形態]
  医学部3年生を対象に、計5クラス(20人規模)に分ける選択必修式セミナーで、small group discussion形式あるいは中規模の講演形式で年8回開講します。

 講師の多く(全40組中36組)は学外からみえます。礼を失しないようにしてほしい。通常の授業では学べない、医療の諸側面を感じ取り、問題意識を身につけてほしい。

 原則として1コマ(90分)程度の講演のあと、2コマ目にグループディスカッションを行い、授業後は学生に、パソコンによるレポート提出を課します。
     
 
1.
ククラスの選択は4月のガイダンス時に行います。講演内容をまとめたシラバス集をもとに、第1〜3希望を選択します。なお、人数に偏りのある場合は、教務学生課で適正人数に調整して、学生に提示します。
     
 
2.
学生が積極的に参加しやすい雰囲気や下地をつくり、円滑なディスカッションを促進するため、3年生の中から学生クラスリーダー1名、副リーダー1名を指定します。クラスリーダーと副リーダーは、事前(授業の3〜4週間前)に講師とメールなどで連絡をとり、当日の授業の目標・内容・流れ・運営方法を話し合って下さい。事前資料・当日資料の受け渡しもリーダー、副リーダーの役割です。手作りの授業に仕上げて下さい。先輩学生が工夫したマニュアルができています。
     
 
3.
授業を受ける際には、講師の作成・選定した事前配付資料(授業1週間前までに学生リーダーを通じて配付予定)に必ず目を通し、予習してください。
     
 
4.
原則として、3限目は講師による問題提起型のプレゼンテーションをお願いします。
     
 
5.
4限目は、1クラスをさらに小グループに分け、班ごとに選んだ班長の司会のもと、講師の問題提起や配付資料を基にした班ごとのディスカッションを60分程度行います。その後、班の討論の流れと全体討議への提起をクラスの前で発表します(計15分程度)。最後に、各班の発表と質疑応答から抽出された問題点を、クラスリーダーの司会でクラス全体の総合討論を15分程度行います。ただし、運営方法は自由に変更可能です。
     
 
6.
大部分のクラスに、クラス担当教員が指定されています。クラスリーダーは、事前にクラス担当教員にも案内を出して下さい。クラス担当教員は学習のアドバイザーですが、原則として、いっしょに学習・討論に参加します。
     
 
7.
授業後にレポート提出を課します。レポート提出をもって出席に代えます。レポートはパソコンを使用して作成(原則Wordを使用)してください。手書きレポートは認めません。クラスリーダーは、レポートをファイルで集めてCD-Rにまとめて保存し、翌週木曜日午後5時までに教務学生課へCD-R(1枚)とプリントアウトを提出します。
     
 
8.
当科目の出欠席の取り扱いは、実習扱いとし、原則として欠席は認めません。
     
 
9.
講師が許せば、事前に現地研修・見学を行うと、内容がより濃いものとなるでしょう。遠慮なく提案してみましょう。
   
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  <学生クラスリーダー、副リーダーの役割>
 
事前配付資料に十分目を通し、講師の問題提起の内容を把握する。
 
クラスリーダーは副リーダーと協力して、以下の点を円滑に行う。
 
講師およびクラス担当教員(指定されていない場合もある)と事前に連絡をとり、当日の授業の目標・内容・流れ・運営方法などを考え、演出する。また、他の学生が積極的にこの授業に参加しやすい雰囲気や下地をつくる。この授業は、原則として学生と講師が作りだすことのできる自由度の高さが特徴です。クラス担当教員にも事前配付資料を渡して下さい。
 
小グループディスカッションを行う場合は、ディスカッションが円滑に行われるよう、学生クラスリーダーは事前にクラスを小グループに分け、班長を決める。
 
講師とクラス担当教員のメールアドレス、電話番号などは別途、クラスリーダーに知らせます。学生クラスリーダーは、学務課でこれら情報を入手できます。アドレスなどの情報は、社会通念に準じて取り扱い、講師本人の了承がない限り公開しないこと。
 
クラスの全体討論の司会役をする。そのために、あらかじめディスカッションのポイントを絞り込んでおくことが望まれる。
 
授業終了後、クラス全員分のレポートを集め、CD-R1枚に集約したのちに、プリントアウトとともに教務学生課に提出する。レポート提出の催促役も努める。プリントアウトは学生個人個人が自分で責任をもって確認すること。
 
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  付録
 
原則として、クラスリーダー・副リーダーは、学生内の互選とする。
 
クラスリーダー・アドバイザーの役目を十分に果たした場合、その努力は最終成績に反映される。
 
将来的に、外来講師との直接交流の体験を生かしてほしい。
 
授業後に希望者による講師との懇話会を開催する(アセンブリ喫茶予定)。選択しなかった講師との交流も可能です。
 
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  [評価]
 受講態度を加味し、レポートを主体に総合的に評価する。
   
  [コーディネーター]
 
 正コーディネーター 堤 ェ 教授(病理学1)
 副コーディネーター 松永 佳世子 教授(皮膚科学)
吉田 俊治 教授(感染症内科)
松井 俊和 教授(臨床医学総論)
佐藤 労 准教授(倫理学)
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  [担当教員・テーマ・サマリー]
 
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1

田辺 功 ((株)ココノッツ取締役、朝日新聞編集委員)

 
「ふしぎの国の医療 〜報道の立場から〜」
   

 日本の常識は世界の非常識とよくいわれるが、医療界の常識もまた、世間の非常識でもある。患者によかれ、と行われている医療行為が本当に役立っているかどうか、欧米ではEBMの観点からの見直しが盛んだ。しかし、わが国では、テレビ「白い巨塔」で象徴される古い体制が改革を妨げてきた。私は数年前、新聞で「ふしぎの国の医療」を連載し、出版した(「ふしぎの国の医療」、田辺功著、ライフ企画、2001、名古屋)。EBMにかなった「患者本位の医療」を医療界の常識にしてほしいから。
*ココノッツHP: http://www.cocoknots.co.jp/

 
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2
矢野邦夫 (県西部浜松医療センター病院副院長)
  「院内感染防止対策」
     この数年、新型インフルエンザ、鳥インフルエンザ、ノロウイルス感染症といったさまざまな感染症が新聞紙上を賑わせている。一方、MRSAのように従来から問題となっている院内感染病原体の制御について病院は現在も四苦八苦している。多剤耐性菌を含むほとんどの病原体の制御のために最も重要な感染対策は手指衛生(手洗いやアルコール手指消毒)であることが明らかであるにも拘わらず、多くの医療従事者は満足な手指消毒を実施しているとはいえない。手指消毒の重要性の認識を新たにすることは、医療の質の向上にきわめて重要である。セミナーでは感染対策の盲点を指摘しながら、手指消毒の必要性についてディスカッションしたい。
*県西部浜松医療センター感染症科HP:http://www.hmedc.or.jp/guide/department/dep025.php
   
 
3
裴 英洙(メディファーム椛纒\取締役社長、病理医)
    「病院経営学 〜きみが院長ならどうする!?〜」
     "病気"を治す医者は多いが、"病院"を治す医者は少ない、と言われています。現在、全国の自治体病院の70%以上が赤字経営です。病院経営にはさまざまな問題が出てきます。利害関係者(=病院を取り巻く人々)の調整が複雑多岐にわたり、絶対唯一の解決方法はありません。しかし、解決しなければならず、患者さんは待ってくれません。
 いずれみなさんも病院経営者や医院経営者になる可能性が高いでしょう。
  ハーバードビジネススクールで開発されたケースメソッドにより、みなさんに、ある総合病院の院長になっていただき、リアルな病院経営における意志決定・問題解決を味わってもらいましょう。稀少医種(?)である"MD+Ph.D+MBA"として医療機関の経営再建に取り組んでいる立場から、病院経営の難しさ・面白さをお伝えします。

【この授業で学べること】
・病院経営における問題解決の具体的なシミュレーション
・ビジネススクールにおける病院経営学の模擬授業
・病院経営の基本姿勢

【参考】
「メディファーム」HPhttp://medixfirm.com/index.html

 
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4

紙屋克子 (静岡県立大学看護学研究科教授、筑波大学名誉教授)

    「人間の尊厳とヒューマン・ケア 〜チーム医療と看護〜」
   

 意識障害は、脳性の一次障害のほかに、循環器・呼吸器系疾患、代謝障害などさまざまな原因によって生ずる。原疾患に対する積極的な治療にも拘らず、意識障害が遷延化した患者の効果的な治療と看護については、いまだ十分な確立をみていない。意識障害が遷延化すると、家族にも精神的、身体的、あるいは経済的に大きな負担を強いることになり、社会の偏見なども加わって、生活破綻に追い込まれる家族も多くみられる。
 今日、尊厳を持って死ぬ権利や脳死患者からの臓器移植が論議されるときの対象として、遷延性意識障害患者が挙げられることもあり、意識障害患者と脳死患者との区別を明確にする必要が生じている。すなわち遷延性意識障害患者の問題は医学的、社会的、倫理的側面への幅広い拡がりをもつ問題として、その性格を強めつつある。
従来、医学的に「意識の回復は極めて困難である」と判断された患者については、看護活動も生命維持や身体機能の調整といった消極的なものにとどまる傾向があった。しかし、急性期からの計画的な看護支援を展開することで、近年は回復例も多く見られるようになった。人間としての尊厳ある生命と生活を保障し、社会復帰させるための効果的な看護支援方法とチーム医療における看護の位置づけ・専門性などについて討論したい。 '
*記事http://www.shimotsuke.co.jp/special/smile-again/20090129/105533

 
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5
東口高志(藤田保健衛生大学外科・緩和医療学教授)
  「栄養管理の重要性」
     栄養管理はすべての治療に共通する基本的医療である。この栄養管理を疎かにするといかなる治療も意味をなさず、医療効果どころか逆に感染症や褥創、あるいは機能障害を惹起させて重篤な副作用や合併症をきたすことになる。とくに高齢者では栄養障害を合併することが多く、治療以前あるいは治療と並行して適切な栄養管理を行うことによって、高齢者医療の実情を大きく改善することができる。また、身体に侵襲を加えねばならない医療、すなわちがんに対する治療(外科治療、化学療法、放射線治療など)の実施に際しては、健常組織や健常機能への侵襲制御や早期回復をはかることが求められる。これを実現できるものは栄養管理にほかならず、ますます栄養管理の担う役割は大きくなる。この栄養管理を職種の壁を越えて実践する集団がNST(栄養サポートチーム)であり、NSTの活動が医療の安全性を高め、同時に質の向上につながることが知られている。NSTは1973年に米国のボストンで誕生したとされるが、長年わが国では受け入れられなかった。しかし、1998年日本独自の運営システム"Potluck Party Method(PPM)"が考案され,NST設立施設は一気に増加し今や1500を越えようとしている。また、診療報酬でも世界に先駆けて大きな評価を受けており、本セミナーではこのNSTの活動を通して、現在わが国に必要とされる医療について論じたい。
*教室HPhttp://www.7796kanwa.com/new/surgery.htm
 
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6
吉田弘之 (大阪府立大学大学院工学研究科、物質・化学系専攻化学工学分野教授)
    「廃棄物から資源とエネルギーをつくりだす」
     現在の地球を取り巻く環境問題を概説したのちに、それを解決するために私たちは何をすべきかを考える。さらに、普通の水を高温高圧化してできる「亜臨界水」を用いて、下水汚泥、食品廃棄物、生ごみ、廃木材、廃繊維や廃プラスチックなどの有機性廃棄物を分解、新エネルギーに転換する技術を紹介する。具体的には、魚あらから燐酸カルシウム、アミノ酸、乳酸などの有価物の回収、ホタテの“うろ”から重金属の除去とDHAやEPAを含む油の回収、下水汚泥からの高速高消化率メタン発酵とバイオメタンガスバイクの走行試験、廃木材の油化とバイオエタノールの原料への転換、牛危険部位の無害化、廃繊維の資源化とエネルギー化などについて講義する。
*大阪府立大分離工学グループHP:
http://www.chemeng.osakafu-u.ac.jp/group5/indexJ.html
 
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7
堀越洋一 (国立国際医療センター国際医療協力局派遣協力課)
山本佐枝子(同看護師、国際協力住民参加型ヘルスプロモーション)
  「人間関係トレーニング」
   

 私は開発途上国での保健医療分野の協力・援助を実践しています。文化・歴史そして社会経済など、さまざまな点で日本とは異なる開発途上国でも、保健や医療は「人」に関わることがらであり、援助もまた人と人との関わりのいとなみです。自分と相手の関係に意識的になることなしには開発援助の現場で自分を活かすことはできないし、相手の期待に応えることも難しいと実感しています。
 私とあなたの間には何があるのか。それはどのようにして知ることができるのか。ラボラトリー方式の体験学習という参加型学習の手法を実際に体験しながら、自分について、相手について、そして、自分と相手の間に起こっていることに気づく手がかりを手に入れて欲しいと思います。
  *堀越洋一氏は、国立国際医療センターを根城に世界中の途上国を訪問している国際派医師であり、現地で今回のテーマ、人間関係トレーニングを実践している。彼の活動地は、パレスチナ、フィリピン、ウガンダ、ジンバブエ、ベトナム、インドネシア、ボリビア、ペルー、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ウズベキスタン、南アフリカ、キルギス、アンゴラ、パキスタン、マーシャル、アフガニスタン、バングラデシュ、マダガスカル、ラオスの19ヶ国にわたっている。
  *山本佐枝子氏は、ボリビア、ブラジルなどで住民参加型ヘルスプロモーションを実践している看護師で、堀越氏とともに、国際協力の現場での体験を共有してくれる。
*国立国際医療センター国際医療協力局HPhttp://www.ncgm.go.jp/kyokuhp/index.html

 
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8
森 千里 (千葉大学大学院環境生命医学講座教授)
  「胎児の複合汚染対策から始まった環境改善型予防医学:ケミレスタウン・プロジェクト」
     現在、私たちは、数え切れないほどの化学物質に取り囲まれて日々生活し、これらの化学物質を知らないうちに体内に取り込んでいる。我々は、臍帯(へその緒)を用いた調査で、現在の日本人の胎児は、ダイオキシン、PCB、DDT類などの複数の環境汚染物質に曝露されていることを明らかにした。つまり、胎児の段階から我々は化学物質に複合汚染されているのである。環境ホルモン等の化学物質による人への健康影響は、大人より子供、特に胎児への影響が危惧されており、胎児の複合汚染が、胎児の正常な発生や発達、出生後の健康に影響を与えているのではないかという懸念が近年報告されるようになった。そのため、我々は化学物質問題への対応として、因果関係が明確でなくとも予防原則に則って対応するべきと考え、最も影響が危惧される胎児や未来世代を対象とした環境予防医学の確立を目指した。そして、子供たちや未来世代への悪影響を与える環境要因を減らし、次世代の健康増進とQOL(生活の質)の向上を目指した研究や対応を行う次世代環境健康学プロジェクトを開始した。さらに、健康に悪影響が心配される化学物質を極力削減したモデルタウンを形成し、社会に向けて環境予防医学の必要性を訴えるケミレスタウン・プロジェクトを開始した。これまでの研究の流れを時系列にお話し、問題解決型の予防医学プロジェクトについてディスカッションしたい。
*ケミレスタウンHP:http://www.h.chiba-u.jp/center/research/chemiless.htm
 
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9
横江清司(スポーツ医・科学研究所所長)
    「スポーツ医学」
     スポーツ医学は医学をスポーツという切り口、視点から見た臨床医学である。スポーツは、人間が各自のQOLの向上をめざして、それぞれのレベルでかかわりをもつ文化である。スポーツ医学の目的・使命は、スポーツのもたらす効果を最大にし、弊害を最小にすることである。具体的には、健康増進、怪我や病気の治療・予防を学際的に究明・実践することである。大きなテーマとしては、「スポーツ外傷・障害の治療・予防」、「生活習慣病の治療・予防」などがあげられる。スポーツ整形外科の専門医として、「オーバートレーニング症候群」、「前十字靭帯損傷の予防」、「高齢者転倒予防教室」、「ドーピングの現状とその問題点」などの最近のトピックスを中心にして、スポーツ医学の実際について学んでほしい。
参考文献:
大学生・高校生のための現場のスポーツ医学入門
最新スポーツ医学、スポーツ医学常識の嘘、スポーツ外傷と障害
*スポーツ医・科学研究所HP:http://www.sorc.or.jp/
 
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10
北野達也(星城大学経営学部医療マネジメントコース主任・教授)
    「医療安全管理学」
     患者安全、安全文化の確立について叫ばれる中、医療者-患者間の関わりなくして、その実現は困難である。本来、医療事故などあってはならないことだが、財団法人日本医療機能評価機構医療事故防止事業部の報告によると、この5年間で6,792件(報告義務対象医療機関273施設+参加登録申請医療機関427施設:2009.9現在)もの医療事故が報告されている。
 現在、医療安全対策加算(入院初日)50点、専従の医療安全管理者の配置が義務づけられたものの、医療事故の未然予防・再発防止、病院経営にも大きく関与する医療事故訴訟・対応、さらには医療事故調査など実践できる者は少ない。
 この講義では、患者本位で安全で安楽な質の高い医療提供を基本とし、患者の権利、安全文化の確立手法、事例分析後の有効活用等学問体系的に学び、医療現場において、患者の立場に立った安全管理を実践するための手法を学ぶ。小生の航空業界での経験、臨床現場での経験、医療事故防止センター初代医療事故防止事業課長としての経験をもとに、医療事故をゼロにするための問題解決策などについて、みなさんとディスカッションしたいと思います。
*星城大学教員紹介HP
http://www.seijoh-u.ac.jp/business/prof/kyouju/45.html
 
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11
小林洋二(患者の権利法をつくる会事務局長、弁護士)
  「患者の権利」
     患者の権利は、患者の医療機関等に対する医療契約上の権利である以前に、人間が普遍的に有する基本的人権の一つとして理解されねばならない。患者の権利の自由権的側面(自己決定権)および社会権的側面(必要な医療を受ける権利)を、表裏一体の基本的人権として保障することによってのみ、医療が利潤志向的・非人間的な産業になることを回避し、社会がその利益を享受し、危険性をコントロールすることが可能になる。
薬害エイズ事件、ハンセン病問題、多発する医療過誤および今日の「医療崩壊」現象を踏まえ、患者の権利のあるべき姿を考える。
*患者の権利法をつくる会HP:
http://homepage.mac.com/kanjanokenriho/kenriho/index1.html
 
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12
隈本邦彦 (江戸川大学メディアコミュニケーション学部教授、元NHK記者)
「医師に求められる科学コミュニケーション」
     「わかりやすい説明」とは何だろう。難解な医学用語を使わず、うまい例え話をまじえれば、それでいいのだろうか。しかし、ともすればそういう「わかりやすさ」では、患者は単にわかったつもりになっているだけだったり、誤解をしているにすぎない場合もある。
NHK記者として医療分野の取材を20年以上してきた立場から、日本の患者の知る権利や自己決定権の現状を振り返った上で、これからの医師に求められるコミュニケーションについて考えたい。例えば、インフォームド・コンセントを「説明と同意」と訳すのは誤訳である。この言葉の本来の意味は、患者がinformed=インフォメーションを得た状態で、患者がconsent=同意するというものであり、あくまでも患者主体の言葉だ。どこにも医師は出てこない。ここでは医師が説明をしたかどうかという「行為」が大切なのではなく、説明の結果、患者が本当にわかったかどうかという「状態」のほうが大切なのである。
 1980年代までは、専門家側から市民にできるだけたくさんの情報を流せば、自然に科学情報への理解が向上すると考えられていた。しかしこうした「欠如型モデル」では情報は効果的に伝わらないことがわかった。それに代わって登場したのが「双方向コミュニケーションモデル」。専門家と市民(医師と患者)が双方向で情報をやり取りし、市民の知りたい「文脈」で、市民の知りたい情報を適切に提供できるというモデルだ。医療の専門家である医師にはそうしたコミュニケーションをつくりだす力が求められる。
後半では,市民の知りたい文脈を知る手がかりとして,DIPEx(患者の語りのデータベース)で語られる患者の言葉を聴き,その感想をもとにした討論も行なう。
*江戸川大学HP:http://www.edogawa-u.ac.jp/
 
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13
岩瀬博太郎(千葉大学大学院法医学教授)
 

「死因究明制度」

   

 日本の死因究明制度は、諸外国に比べ極めて未熟な状態にある。そのため、公的に死因究明されるべき死体の範囲が、犯罪性が疑われる事例のみに限定される傾向がある。また、死因究明で得られた情報に関しては、捜査情報として非開示とされる場合が多く、犯罪に関係のない、医療事故、交通事故、流行病などで死亡した場合に、情報の有効利用ができず、予防対策や、示談などの民事的解決が妨げられている。こうした日本の死因究明制度が形成されるにいたった歴史的経緯や解決されるべき問題点について、本講義で概説するとともに、診療に関連した死亡時の死因究明のあるべき姿についても考察する。
*千葉大学法医学HP:http://www.m.chiba-u.ac.jp/class/houi/index.html

 
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14
加藤良夫 (南山大学法学部教授、「医療被害防止・救済システムの実現をめざす会」代表)
  「医療事故を考える 〜医療被害者救済の立場から〜」
     学生の皆さんは、医療事故の報道をどのような思いでみていますか?将来、医師となって、もし自分が医療事故を起こしたときにはどういうことになるのだろうか、と不安になることがあるかもしれませんね。医療裁判の仕組みや、どういうときに刑事事件になるのか、ということについてもお話します。何より、被害を受けた患者さんの思いはどのようなものか、事故を起こさないためにはいかにあるべきか、事故後の正しい対応、について学んで欲しいと思います。さらには、安全な医療をつくっていくために、何をどう改善すべきかについても一緒に考えてみたいと思います。患者側弁護士30年の経験を踏まえ、これらのことについて事例を示しつつ、わかりやすくお話します。
*医療被害防止・救済システムの実現をめざす会HP:http://homepage2.nifty.com/pcmv/
 
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15 宇山一朗(藤田保健衛生大学上部消化管外科教授)
「悪性疾患に対する外科治療の進歩と未来 〜内視鏡治療からロボット手術へ〜」
     以前の外科治療の基本は"Grate surgeon, Big incision"といわれた。優秀な外科医は、大きくお腹を開けて、よい視野で癌病巣を完全に切除する者であることを意味した。癌治療で最も優先されるものは根治性であり、術後生活の質などを考慮したものではなかった。しかし、1990年ごろより、低侵襲性を目的とした大開腹を必要としない腹腔鏡下手術が導入され、外科的治療は革命の時代に突入し現在に至っている。現行の腹腔鏡下手術にはいくつかの問題点があり、この手術の適応に制限をもたらしている。そこで、これらの問題点を解決すべく内視鏡手術支援ロボット(da Vinci Surgical System)が開発された。当院では、日本で最も早く、このロボット手術を消化器外科領域の悪性疾患治療に導入したので、このセミナーで紹介する。
*第3外科教室HP:
http://www.fujita-hu.ac.jp/~geka/koza_main_shokaIII001.html
 
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16
高柳和江 (東京医療保健大学教授、笑医塾塾長、癒しの環境研究会世話人代表)
    「笑いと癒しの環境」
     叱咤激励されても、がんばれない、心が打ちふさがれている。こんなとき、ハードでも、ソフトでも自然治癒力だけでなく、自己治癒力が高まる癒しの環境が必要だ。
クウェートでの10年間の小児外科医としての経験が私を変えた。病んでいるときこそ、人間として尊厳が守られるべきだ。人間として遇されることは当たり前だ。
一歩入っただけで、安心して、リラックスして、直ぐにケアを受け、元気になり、生きる歓びを感じる。これがあるべき病院だ。社会だ。人間としての当たり前の環境を日本の社会につくろう。癒しの環境研究会認定の「笑い療法士」は現在370人。安全な笑いを患者さんから引き出し、笑いのあふれる病院にしようではありませんか。
笑医塾では、青森県で県民65人にひとりに笑医の研修をしてきた。病院まるごとほほえみプロヂュース事業では、患者さんの気力を引き出し、活力を高める職員研修を行っている。効果を免疫的に、遺伝子的に変化をみる予定である。

参考図書1:「死に方のコツ」 小学館文庫、2002
参考図書2:「癒しの国のアリス」 医歯薬出版、2004
参考図書3:「生きる喜び・アゲイン」 医歯薬出版、2007
参考図書4:「人間笑い力」 西村書店、2008
参考図書5:「笑いの医力」 西村書店、2008
参考図書6:「生き方のコツ」 飛鳥新社、2009
参考図書7:「ほほえみ処方箋」 エディターズサード、2009
*癒しの環境研究会HP: http://www.jshe.gr.jp/
     
 
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17
宮良球一郎 (宮良クリニック院長、沖縄県浦添市)
 
「新離島医療」
 
学生の皆さん、多くの島からなる沖縄はまさしく離島医療の最前線です。一方、EBMを実践しやすい場所でもあります。今回、離島医療の問題点を討論しますが、魅力溢れる未来医療「新離島医療」の実験エリア「沖縄」をのぞいてみて下さい。(EBM:証拠に基づいた医療)
(現在・未来)
1. 救急医療体制の充実(救命救急センター、救命ヘリ、IT、etc)
2. 離島医療へベテラン医師赴任による医療レベルの向上、行政のバックアップ
3. 研修施設の充実による「沖縄」という離島医療の魅力
4. 沖縄型離島医療は僻地医療ではなく、沖縄はチーム医療が実践できる未来型医療の実践場所
5. 本土でしばしば問題となる大学間や病院間の占有権争いがなく、病診連携の充実等で沖縄本島が一つの医療体系となって活動できる。
6. 私の専門分野(乳癌領域)では、「沖縄から世界へ」を合い言葉に新しい形のチーム医療を形成
(問題点)
1. 「Dr.コトー診療所」のコトー先生へのあこがれと失望
2. 住民の離島離れと高齢化
3. 県立病院の崩壊??
*宮良クリニックHP:http://www.miyara.jp/
 
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  18 馬原文彦 (馬原医院院長、徳島県阿南市)
    「地域医療とアカデミズム」
 
 地域医療と云うと、学問や高度医療の第一線を退き、ゴルフや趣味に生きる道を選ぶかのように思う人もいる。ところが、現実は大学や教育病院とちがって、地域医療の現場では自分ひとりで決断を迫られることも多く、むしろより幅広く勉強をする必要がある。私は無医地区で開業して後に、診療の傍ら当時日本には無いといわれていた紅斑熱群リケッチア症を発見し、日本紅斑熱と命名、その疾患概念を明らかにしてきた。本講義では、一つの臨床上の疑問から解決に向けてのプロセスを科学的に検証し、開業医としての地域医療における役割と科学者としての医師の立場を学生諸君と対話したいと考えています。

1.第一線診療とサイエンス
  ・地域に根ざした医療・福祉の発信、専門性と研究、生涯学習
2.地域医療と医師
  ・地域医療・介護医療:医療施設、福祉施設の種類と役割分担
  ・医師と地域社会:学校医、健康スポーツ医、産業医、健康講座
  ・地域社会との交流:医学講演会、文化の共有(阿波踊り、陶芸、短歌)
   
問1.医療機関、福祉施設:どのような形態が考えられるか(どのような種類があるか、それぞれの役割)。
問2.あなたは地域医療の担い手です。 望ましい医師像とは?思いっきり自分の理想を語ってください。    
問3.地域との関わり:あなたならどう発信しますか。
    ★ 見学にいらっしゃーい!当院にて研修者の特典:日本紅斑熱の第一号患者さんとツーショット写真が撮れます。だいぶん高齢になられたので期間限定です。
*馬原医院HP:http://www.citydo.com/prf/tokushima/guide/sg/810001802.html
 
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  19 高橋 都(獨協医科大学公衆衛生学准教授)
    「闘病者のセクシュアリティ」
     「先生、手術のあとのセックスのことで相談なんですが。」いきなり、こう患者さんから切り出されたら、どうしますか?

 15年前、女性の患者さんに突然聞かれてフリーズした私は、それから真剣に「医療の中の性(セクシュアリティ)」を考え始めました。
性は人間の暮らしの重要な一部分ですが、学部授業の中で、「患者の性」「医療行為と性」をきちんと学ぶ機会はほとんどありません。医師として働くときに、きっと役立つ授業をしたいと思います。活発な議論、大歓迎です。
この授業の目的は以下の2つです。
・各種治療が人間の性機能に及ぼす影響について学ぶ。
・医療者として、性相談(情報提供や問題解決への相談)に、無理なく効果的にのるためのヒントを学ぶ。

*日本がんと性研究会HPhttp://square.umin.ac.jp/oncosexo/
 
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  20 鈴木 忠(慶応義塾大学医学部生物学准教授)
    「生命の再生:微小な動物の環境適応について」
     コケの隙き間のような場所に棲む微小な動物は、環境が乾燥するにしたがって積極的に乾燥してクリプトビオシスとよばれる無代謝状態となる。代謝のない状態は通常「死」と呼ばれるが、クリプトビオシスでは生命が隠された状態で、水が得られれば再び生命が現れる。この現象はレーヴェンフックが最初に気づいて以来、科学史上の著名人たちからも注目され続け、先ごろではとうとう宇宙実験がなされるに至った。

 この授業では、そのような動物群の代表として緩歩動物(クマムシ)にまつわる生物学的な話題を提供する。学生諸君は「クマムシは最強!」という噂を耳にしたことがあるかもしれないが、本当にそうだろうか。自分でよく考えてみよう。そして、地球上の生物が(ヒトも含めて)いかに環境に適応して生きているかについて考えてほしい。
*紹介サイト:http://smh.hc.keio.ac.jp/suzukiatsushi.htm
 
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21
中島陽子 (医をめぐる勉強会代表 乳がん体験者)
  「あなた」と「わたし」の間にあるもの?
      患者、がん患者、乳がん患者、とひとくくりにされがちな一群の人々は、その病によって、おおまかに似たところはあるにしても、それぞれ一人の人間です。医療の現場は、その一人一人違う人間が、患者にとっては非日常、医療者にとっては日常という立ち位置で出あう場所です。そこでは、わたし、と、あなた、という関係性が重要になってくると考えます。その関係の中でなにが大切なのでしょうか。
乳がんという病に出会ってから勉強を始めた心理学をベースに、自分のできることを始めた「わたし」の物語と、その過程で知り合った様々な人々と事柄をいくつかご紹介して、そこから「あなた」は何を感じ、何を思うかに焦点を当てたいと思います。
*医をめぐる勉強会 サイト: http://www5a.biglobe.ne.jp/~y-kaze/index.html
 
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  22 吉岡秀人
(ジャパンハート代表:発展途上国で子供を救う国際医療協力ボランティア医療団)
    「国際医療貢献」
     海外医療における「質」と「量」のバランス概念の確立を学ぶことで、海外医療に従事したとき医療人として最も必要なこととはどのようなことなのかにアプローチする。

 限られた資源(人員やお金など)の中でいかに効率的に医療を展開できるか。多くの人間の生命を、一人当たりごくわずかな金銭的負担、人的資源の投入にて救うことを是とする公衆衛生分野の活動は、常に正解を導き出せるのか。そもそも命というものだけでなく人生や生活という分野を抱え込む医療という分野で効率論に終始することは正しいことなのか。

 海外医療活動とはHealthとMedicalの分野に大きく大別される。現在はHealthの分野での援助が主流であり、ODAも特に大きな予算が割かれている。世界のトレンドは今どこにあるのか?なぜそのトレンドが生み出されていったのか?

 ところで、日本で働く医療者が海外医療活動に従事する場合、Health分野の特別な知識も不十分なままその活動に参加している現状がある。多くの医療者が望む海外医療活動とはいかなるものなのか? Medical分野での援助に予算を割かないのはどうしてなのか? 現実問題として、病人を放置したままのHealthのみの医療援助は正しいのか? 今後、学生としてあるいは医者として医療援助を将来行うときに、現行の体制での問題点は何で、どう改善してゆく必要があるのか?
さまざまな角度から現行の海外医療に切り込み、将来の医療援助像を探り出す。その過程で医療援助の「質」と「量」という究極の選択をどうバランスするかということについて考え、海外医療を行う医療人として最も大切な資質とは何なのかを見つめてゆきたい。
*ジャパンハートHP:http://www.japanheart.org/
 
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  23 林 秀信(弁護士、腎移植患者)
    「移植医療を考える」
     私は、弁護士として、かつ患者の立場で、多くの医療事件に関わってきた。また、青年期から腎臓病患者として暮らし、1997年には腎移植を受けて今まで生き抜いてきた。

 このような体験のなかから、私なりに考えてきた医療の問題、とりわけ、移植医療における問題点について、いっしょに考えてみたい。
1.日本において、移植医療は必要か。
2.患者に、移植を受ける権利は存在するか。
著書:「修復腎移植の闘いと未来」、生活文化出版、2010年
*修復腎移植に関するblog:http://hiro110732.iza.ne.jp/blog/entry/1390589/
 
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  24 加納秀記(藤田保健衛生大学救命救急医学講師)
    「あなたは黒を判定できますか? 〜集団災害時のトリアージと災害対策〜」
     阪神淡路大震災をきっかけとして、日本で使用するトリアージタッグは統一された。実際に大量にタッグを使用した事件として尼崎の電車事故、秋葉原の殺傷事件があげられる。

 黒と判定されて、現場で死亡宣告され救急搬送はされていない。患者家族の気持ちは? 本当にそれが妥当な判断なのか? ロンドン多発爆発事故のとき、どのようにトリアージが行われ、何人に黒がつけられたのか?

 トリアージの行い方を学び、実際にトリアージを行ってみよう。
さらに、災害時の机上訓練を行い、災害時に必要な知識・多職種との連携・学生ボランティアの参加方法などを学び、災害対策について考えましょう。
*救急部HP:http://www.fujita-hu.ac.jp/HOSPITAL1/common/dpt_clinic/emergency.html
 
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  25 堤 寛(藤田保健衛生大学医学部病理学教授)
    「検体の所有権」
 病理標本はだれのものでしょう。患者さんから採取された臓器・組織・細胞から、顕微鏡用の病理標本がつくられます。
 残りの検体は、固定液に入れて一定期間保存され、そののちに焼却処分されます。病院(病理部門)が管理するこうした病理標本は、病院の所有物でしょうか? 患者さん本人のものでしょうか? 本来の病理診断以外に、教育、研究、症例報告、精度管理に利用するときにはどうすべきでしょう。血液や歯牙の場合はどうでしょう。
 尿、便や毛髪からもDNA検査が可能です。ただ、血液の所有権を主張する人でも、便や髪の毛の所有権は主張しにくいでしょう。
  診療録、X線フィルム、CT写真、エコー図、心電図、肉眼写真や顕微鏡写真についても同様の議論が必要でしょう。
*病理学教室HPhttp://info.fujita-hu.ac.jp/pathology1/
*検体の所有権http://info.fujita-hu.ac.jp/pathology1/for_student/kentainoshoyuken.htm
 
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  26 鈴木俊夫(鈴木歯科医院院長、名古屋)
    「口腔ケアと在宅歯科診療 〜喫食障害の改善を目指して〜」
     美味しく食べることは、食べ物を栄養として取り込み、健康を維持・増進できる鍵である。地域で開業している歯科医師は、治療とケアを通して住民の歯科・口腔の健康管理を担っている。
 その活動の成否は、医師・薬剤師・看護職・栄養職・介護職など、また行政・民生委員・介護支援事業所などといかに連携を図るかにある。
 そこで今回、口腔の現状を供覧して、地域で、また、施設でどのように取り組んでいるかを紹介したい。
鈴木歯科医院HPhttp://www.ne.jp/asahi/suzuki/dental-clinic/
日本口腔ケア学会HPhttp://www.oralcare-jp.org/
 
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  27 舩木良真(三つ葉在宅クリニック院長、名古屋)
    「在宅医療の新しい可能性」
    「在宅医療」と聞くと、みなさんはどのようなイメージをもたれるでしょうか。「古い医療」「田舎の医療」「農業のような感じ」など、さまざまなことを想像される方がいます。実際の在宅医療とは何なのか、これからどこに向かっていくのかを、マクロな視点から社会の変化をとらえ、在宅医療の実際や可能性を、映像を使いながら説明をさせていただきたいと思います。

 社会構造の変化、医療費問題などから在宅医療の必要性が語られていますが、いまひとつ押しつけられた感じのある理論が展開されています。しかし、人が、"よく生き、よく老い、よく病み、よく死ぬ"とはどんなことかを、みなさん自身の視点でとらえてみると、住み慣れたコミュニティのなかでの生活を支える役割もみえてきます。また、新しい時代の医療として、現場で働く医師にとっては「ITの活用」「プロフェッショナル」「グループプラクティス」など、在宅医療のイメージに創造的な新しいキーワードも浮かびあがってくることと期待しています。
*三つ葉在宅クリニックHPhttp://www.mitsuba-clinic.jp/
 
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28 柘植勇人(つげ耳鼻咽喉科院長、蒲郡市)
    「趣味を地域医療に生かす」
     ストレスという測定不能な要因が、明らかに症状に検査値に影響しているとしか思えない症例。日々の診療において決して珍しいものではなく、知識、技術では追い付かない何かが医師に求められていることを痛感する毎日であります。
 近年「癒し」という括りのもと、音楽療法、アロマセラピーといった、まだ医療とは呼べないでしょうが、その何かを臨床に生かそうという動きをよく耳にします。「笑い」もその括りの中にある様で、免疫細胞、血糖値、除痛等への影響が報告されています。そこで私の趣味「落語」です。300年かけて日本人が作り上げた笑いの集大成。これを使って、単なる医療以外の何かを地域に提供したい。「無床診療所」を「有笑診療所」にしてしまおう。
 そんな思いから始めた院内落語会、市内各公民館での健康講座と落語の会。今回、医者の演る落語の実演を含め、ご紹介したいと思います。
*柘植勇人先生は、趣味として"駒久屋南朝"(こまくやなんちょう)の高座名をもつ素人落語家でもある。豊橋落語天狗連メンバーとして活動するとともに、クリニックでのおみやげつき落語会、「難聴のおはなし」、「笑いと健康」といった健康講座を開催している。平成6年度の第10回国民文化祭全国素人落語競演会で3位入賞!! 2008年には、高柳和江先生(No.16講師)が主催する癒しの環境研究会が認定する"笑い療法士"の資格を取得した。
*情報:http://yaplog.jp/usakonofukuya/archive/560
 
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清水良美(医療法人社団清雅会、清水産婦人科クリニック理事長、東京)

「これからの産婦人科医療を考える 〜産婦人科地域医療の現状とこれからの展望〜」

   

 産婦人科地域医療は、マスコミ等で伝えられているように、大変厳しい現状になっております。
 現状の産婦人科開業医の毎日の診療状況と、今後の円滑な産婦人科診療に必要な他科とのネットワークについて紹介したいと思います。 
 また、3Kと言われて人気のない産婦人科ですが、産婦人科にしかない魅力についてもお話しし、ともに議論したいと思います。
  この講義を通じて、今の産婦人科地域医療の真の姿を少しでも理解し、いっしょに考えていただければ幸いです。
*清水産婦人科クリニックHP:http://www.shimizuclinic.net/

 
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澤田富夫 (さわだウィメンズクリニック・名古屋不妊センター院長、名古屋)
    加藤英明 (横浜市立大学病院後期研修医)
    「生殖医療 〜実践者と生まれてきた子どもから学ぶ〜」
   

 生殖医療は体外受精・胚移植技術の開発、さらにそれに続く顕微授精の進歩により劇的に変化した。
 これらの技術は、一つの卵子と精子を人工的に操作することにより新たな生命を誕生させることを可能とした。
 その結果、多くの不妊症患者に光明をもたらしたが、一方では代理母に代表されるような、本来の夫婦関係を超えた法律的問題が浮上した。
 さらに、近年の胚操作技術の向上によって着床前胚診断が可能となり、生命の選択という新たな問題が出てきた。産まれてくる子供は誰のものなのか。子供のアイデンティティとは何か。
 これまでの生殖医療進歩の流れをお話しし、生殖医療現場を実際に見学していただき、それに伴って発生してきたさまざまな倫理・社会・法律問題を討論する。
 授業では、AID (Artificial Insemination of Donor;非配偶者間人工授精)で生まれ、自らの出自を探している横浜市大出身の医師・加藤英明が、自らの体験と彼の活動を語る。
*さわだウィメンズクリニックHP:http://www.geocities.jp/sawadawomens/
*AIDで生まれた子どもの会(DOG):http://blog.canpan.info/dog/
*非配偶者間人工授精の現状に関する調査研究会:http://aid.hc.keio.ac.jp/condition.html

 
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勝村久司 (「医療情報の公開・開示を求める市民の会」事務局長)
    「医療被害を考える 〜市民の立場から〜」
     まず、多発している陣痛促進剤による医療事故を例に、薬害・医療被害の背景や本質、さらに日本の医療が抱える問題点を探る。次に、医療裁判の現状や被害の実態について解説し、事故後から裁判を通しての被害者の思いや、カルテ・レセプト開示や病院情報の公開など、医療の情報公開を求めてきた被害者運動の歴史について理解を深める。続いて、情報共有の時代に新たに求められる「インフォームド・コンセント」のあり方や、事故防止のために本当の意味で必要なリスク・マネジメントとは何か、またどうあるべきかについて考える。最後に、医療被害者の立場で、厚生労働省の医療安全対策や診療報酬改定に関わる審議会に委員として参加した経験から感じたことについて言及する。
*医療情報の公開・開示を求める市民の会HP:http://homepage1.nifty.com/hkr/simin/
 
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岸本寿男 (岡山健康保健医療センター所長)
  「音楽の医療・福祉現場での可能性」
     あなたにも音楽で心が震えるほど感動した経験はきっとあるだろう。音楽は古来より人の魂を揺り動かし、癒す力を持つことはよく知られ、現代の複雑でストレス過剰な世の中においてはますます重要になってきた。近年、その効果をさらに意図的に治療に用いる音楽療法も注目されている。その応用範囲は医療、福祉、教育、芸術に広くまたがる大きな可能性を秘めた分野である。演者はこれまで医療現場や福祉施設での音楽活動を通じて、音楽の癒しの力や有用性を実感してきた。それらの事例や実際の音源、さらに演奏なども紹介しつつ、医療における音楽の役割や可能性について一緒に考えてみたい。ダウン症ピアニストの越智章仁氏(第36番目の講師)、乳がん患者の寺田佐代子氏(第37番目の講師)との共演を予定している。お楽しみに。
*内科専門医である岸本寿男氏は、わが国のクラミジア感染症研究の第一人者でもある。性感染症学会理事のほか、2004年の音楽療法学会会長も務められた。尺八演奏の名手で、1995年に米テレビ番組の挿入曲で「1994年度北西部地域エミー賞作曲賞」を受賞している。
*岡山県環境保健センターHPhttp://www.pref.okayama.jp/soshiki/kakuka.html?sec_sec1=185
*音楽療法学会HP:http://www.jmta.jp/
 
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近田真知子 (地球市民ACTかながわ/TPAK代表)
  「国際協力と医療 〜アジア少数民族の子どもたちの教育支援を通して〜」
   

 世界には、学校に行きたくても行けない子どもたちが日本の人口と同じくらい(1億人)いるのをご存知ですか? その理由のほとんどが、貧困です。
 地球市民ACTかながわ/TPAKは、そのような子どもたちが一人でも多く教育を受けられるように、アジアで活動しています。私たちの活動地であるタイ、ミャンマー、インドの山岳部には、貧困で教育が受けられないために厳しい状況に置かれている少数民族の子どもたちがたくさんいます。また、衛生の意識がないために死んでいく子どもや、十分な医療が受けられずに泣いている子どもたちがたくさんいます。
 このような子どもたちが明るい未来を開くためには、医療の知識や技術をもった人の協力が、何より必要なのです。
国際協力というと遠い世界のことに感じますが、身近な行動から大きな効果につながることもあります。いっしょに考えましょう。
*地球市民ACTかながわHP:http://www.tpak.org/

 
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  34 豊田郁子(新葛飾病院医療安全対策室)
    「医療事故対応の実際、患者発の架け橋」
     私のこれまでの活動は、医療事故で幼い息子を亡くした経験から「もうだれも医療で傷ついてほしくない」という思いからスタートしています。現在、セーフティーマネージャーとして病院の医療安全を担当しています。この職に就いてから感じていることは、医療者側が想像する患者・家族の感情は、実際の患者・家族の気持ちとかなり乖離しているのではないかということでした。
いま医療現場では、医療事故が発生した際、患者・家族にどう対応していくことがよいのかなど、取り組まなければならない課題が山積みです。そこで今回は、私が医療現場で実際に患者の視点を取り入れて実践していることをご紹介し、そのうえで医療事故が発生した当該病院が果たすべき責任とは何か、患者・家族に向き合うために必要な院内の支援、院外の支援、第三者機関の必要性などについて、未来に向けた意見交換をしたいと思います。
*新葛飾病院医療安全対策室HPhttp://www.shinkatsu-hp.com/busho/taisaku/
*講演記録http://www.mimihara.or.jp/nurse/data/toyoda-kouen.pdf
*架け橋〜患者・家族との信頼関係をつなぐ対話研究会http://medmed2008.blog43.fc2.com/
【著書】うそをつかない医療―患者と医療者をつなぐ仕事(豊田郁子著、亜紀書房)
 
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  35 郡 裕美(スタジオ宙一級建築士事務所主宰)
    「こんな病院がほしい」
    病院を設計するとき、建築設計者は多くの側面を考慮しなければならない。日進月歩する医療技術や体制に対応できる全体計画、外来、診療部、病棟など各部の機能、ひいては病院と地域との関係などを考えた上で、医療従事者、患者、近隣住民、様々な立場を熟慮し、最善の選択をしなければならない。しかし、設計を発注するのは常に病院経営者側であり、設計の最終的な判断は経済性や効率性が優先されることが多く、医療従事者が快適に働ける環境作りや、患者の立場を優先している設計例は少ない。
私は、住宅や高齢者施設の設計、空間認識を題材にした実験的なアート作品の制作を通し、人間と建築空間について考察してきた。また、自ら交通事故での長期入院、癌に冒された父の看病など、患者として、またその家族として、病院で長時間「暮らした」経験を通し,心身両面から人間を癒すことができる病院建築について考えてきた。
病院は、人の病を治す場所である。しかし、それは、医学を通して治療することだけではない。快適な空間に居れば病も自ずとよくなるだろう。気持ちのよい場所で働けば、患者に対してよいオーラを発することができるだろう。「こんな病院がほしい」病院に関わる人間の目線を通して、一緒に考えてみたい。
参考図書:
●建築設計資料集成:福祉、医療、日本建築学会編、平成14年
●病院建築:建築におけるシステムの意味 岡田 新一/著、オーエスプランナーズ出版、2005.6
●ヨーロッパの病院建築.建築巡礼.伊藤 誠/文・写真、丸善出版、1995.4
●病院建築のルネッサンス、INAX booklet、聖路加国際病院のこころみ、Inax出版、1992.4
*株式会社 スタジオ宙 一級建築士事務所HPhttp://www.studio-myu.com
http://www.yumikori.com
 
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36
越智知子、越智章仁 (ダウン症ピアニストの母子)
 「患者の気持ち1.ダウン症を乗り越えて」
   

32歳の長男、章仁はダウン症の障害をもっています。9歳から始めたピアノは、彼に与えられた数少ない能力となり、それは言葉以上のコミュニケーションをとってきました。オリジナル作品は知識からではなく、すべて彼のセンスによって生まれたものです。
 筋力が弱く、本来ピアニストには向かないと言える息子との20年という練習の日々は、若くして亡くなった主人からの贈り物の人生と思い、ささやかな演奏活動ができることを感謝しています。当日は、章仁のピアノ演奏と、母であり彼の教師でもある私のお話もさせていただきます。
 よろしければ、彼が作業する私立作業所「ほっとハウス」のHPをごらんください。
http://www.tanken-go.biz/hot/index.htm

 
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37
寺田佐代子(藤田保健衛生大学病院、乳がん患者会"わかば会"会員)
  「患者の気持ち2 乳がん患者からのメッセージ」
   

どのように、がんと向き合って生きていけばいいのでしょうか?
がん患者は、自分と向き合い、自分をよく知り、自己コントロールしていくことでQOLを高めます。ぴあサポート活動を開始して7年目。がん患者には、自助(セルフケア)が大切で、互助(ピアサポート)は、自分を活かし、人生をより豊にします。
1.患者会発足からの活動紹介 → テーマは「いのちのつながり・輪の和」〜
2.オーストラリアのがん患者のためのサポートプログラムに参加した体験紹介。
ピアサポートでがん患者のこころのセルフケアをファシリテートするサポートプログラム開発、実践を紹介し、がん患者支援としてソーシャルサポートを展開中。
3.患者が傷ついたという医療者の言葉を紹介(患者会でのエピソード)
グループワーク実施 → スモールグループディスカッション → 各グループ発表
・患者が傷ついたという言葉、そのケースについて、患者はこの時、どう思ったのか?
・患者の嫌がる言葉、患者にとってよい言葉 → 具体的にケースをあげてみる。
・患者と医師のコミュニケーションにおける留意点は?
4、自己表現トレーニング → 自分の気持ちをよりよく相手に伝えるトレーニングをしてみる。患者と医師のよりよいコミュニケーションのために、自分自身のコミュニケーションスキルを高めよう。
著書:「がんをポジティブに生きる、セルフケアのすすめ」(新風舎、2007、\800)
  「がんの心の悩み処方箋、精神科医からあなたに」
(保坂隆、寺田佐代子共著、三省堂、2008、\1,600)
   「がん患者のためのピアサポート」(テンタクル社、2009、\1,680)
*NPO法人ぴあサポートわかば会HP  http://www.npowakabakai.com

 
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渡辺幸子 (国立療養所邑久光明園入所者)
    牧野正直 (国立療養所邑久光明園、園長)
     「患者の気持ち3.人間回復のかけはし −ハンセン病の歴史に学ぶ−」
   

どんな病気であっても、患者の人権は守らねばならない。
 病気に苦しむ人を社会から排除し、関心の外に置くことは、病気ばかりでなく病気にかかった人にまで、偏見や差別を生むことにつながる。
 一つの法律ができたことにより、その病気と病気にかかった人たちが、社会から排除されて関心の外に置かれてしまった。その病気とはハンセン病で、一つの法律とは明治40年法律第11号「癩予防ニ関スル件」に源を発する「らい予防法」である。この法律は89年間という長きにわたり継続され、その間、ハンセン病患者の人権は著しく蹂躙されつづけた。数えきれない悲劇が患者本人ばかりでなく、その家族、親族にまでおよんでしまった。
 ハンセン病の歴史から、間違った医療政策はどの様な結果を生んでしまうのかを理解し、二度と同様の間違いをしないために、何をしなければいけないのか考えたい。
*国立療養所邑久光明園HP:http://www.hosp.go.jp/~komyo/
*国立療養所長島愛生園HP:http://www.hosp.go.jp/~aiseien/

 
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藤本 栄 (愛ライフ株式会社代表取締役、ALS人工呼吸器装着者)
  藤本友香 (栄さんの妻、通訳)
    「患者の気持ち4.”ALS車椅子社長”しゃべれなくても、動けなくても、何でも出来る!私は生きる」
    次のような諸点について、みなさんに考えてほしい。
1. ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者の発病から呼吸器つけるまでの心模様(10分)
2. 病気の受容と社会復帰にいたるまで(10分)
3. 告知のタイミングと告知後の気持ち(15分)
4. 中京テレビ「ALSを楽しく生きる」(ビデオ、15分)
5. 心の医療がもたらす効果スピリチュアルな真実(ADL)(10分)
6. 患者が医師に望むこと(10分)
7. もし、あなたがALSになったら?ALSを楽しく生きるヒント(ALS総括)
生きる真実(15分)
*愛ライフHP:http://www.ailife.co.jp/
 
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40
萩生田千津子 (車いす女優)
   「患者の気持ち5.何故、命を助けなければならないのか、何故、命を守らなければならないのか」
      人間の尊厳、人としての存在意味、人としての在り方…etc、難しく言い出したら切りがない。ただ、ひとつ、優しい言葉で言えるとすれば、今、命をもらって生きているという事実である。
 生まれたということが事実であるなら、死ぬということも事実。だとすれば、この事実をどう受け止め、次代にどう繋いで行けば良いのか…。人間は全て生きる権利を持って生まれている。それを奪う権利は誰にもない。どんな人も、間違いなく、全て母という人から生まれてきた。
 その人間として生まれた自分を、どこまで愛せるのか。自分をどこまで信じることができるのか。自分をどうやって癒やすことができるのか。その結果が、全て他人に向かう…。生きるということを、お互い一人の人間として、一緒に考えられればと思います。
*萩生田千津子さんは自動車事故で頚髄損傷を受傷後、車椅子生活をされている。動かせる上半身を可能な限り利用して、発声訓練を積み重ね、現在、声優としてみごとに活躍中です。
*プロフィール:http://www.sbrain.co.jp/keyperson/K-1246.htm

教科書等
 [教 科 書] 特になし
 [推薦参考書] 特になし
 [使用教室]  生涯教育研修センター1号館、各講義室、フジタホール500ほか。


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