2008年度: 医療を考えるセミナー (選択必修式)


[教育目標]  [学習目標]  [授業形態]  [学生クラスリーダー、副リーダーの役割]
[付録]  [評価]  [コーディネーター]  [担当教員・テーマ・サマリー]  [教科書等]

 
[教育目標]

  現代医療のかかえるさまざまな問題点を医療者の一人として深く考え、議論し、理想と現実の違いを知ることを通じて、よりよき医療者をめざすモチベーションを高める。
 
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  [学習目標]
 
1.
現代医療の抱えるさまざまな問題から自ら選択し、積極的に問題を捉えて議論に参加する。
 
2.
医療各分野の専門家あるいは当事者の問題提起を受け止め、自分の問題として真摯に考え、調べたうえでレポートにまとめる。
 
3.
将来、プロの医療者として働く自覚を高める。
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[授業形態]
  医学部3年生を対象に、計5クラス(20人規模)に分ける選択必修式セミナーで、small group discussion形式あるいは中規模の講演形式で年8回開講します。原則として1コマ(90分)程度の講演のあと、2コマ目にグループディスカッションを行い、授業後は学生に、パソコンによるレポート提出を課します。
 
1.
クラスの選択は4月のガイダンス時に行います。講演内容をまとめたシラバス集をもとに、第1〜3希望を選択します。なお、人数に偏りのある場合は、教務学生課で適正人数に調整します。
 
2.
学生が積極的に参加しやすい雰囲気や下地をつくり、円滑なディスカッションを促進するため、3年生の中から学生クラスリーダー1名、副リーダー1名を指定します。クラスリーダーと副リーダーはアドバイザーと相談しつつ、事前(少なくとも授業の3〜4週間前)に講師とメールなどで連絡をとり、当日の授業の目標・内容・流れ・運営方法などを話し合って下さい。事前資料・当日資料の受け渡しもリーダー、副リーダーの役割です。手作りの授業に仕上げて下さい。
 
3.
授業を受ける際には、講師の作成・選定した事前配付資料(授業1週間前までに学生リーダーを通じて配付予定)に必ず目を通し、予習してください。
 
4.
原則として、3限目は講師による問題提起型のプレゼンテーションを行います。
 
5.
4限目は、1クラスをさらに小グループに分け、班ごとに選んだ班長の司会のもと、講師の問題提起や配付資料を基にした班ごとのディスカッションを60分程度行います。その後、班の討論の流れと全体討議への提起をクラスの前で発表します(計15分程度)。最後に、各班の発表と質疑応答から抽出された問題点を、クラスリーダーの司会でクラス全体の総合討論を15分程度行います。ただし、運営方法は自由に変更可能です。
 
6.
授業後にレポート提出を課します。レポート提出をもって出席に代えます。レポートはパソコンを使用して作成(原則Wordを使用)してください。手書きレポートは認めません。クラスリーダーはアドバイザーの協力を得て、レポートをファイルで集めてフロッピーディスクにまとめて保存し、翌週木曜日午後5時までに教務学生課へフロッピーディスク(1枚)とプリントアウトを提出します。
 
(7) 当科目の出欠席の取り扱いは、実習扱いとし、原則として欠席は認めません。
 
(8) 講師が許せば、事前に現地研修・見学を行うと、内容がより濃いものとなるでしょう。遠慮なく提案してみましょう。
   
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  <学生クラスリーダー、副リーダーの役割>
 
事前配付資料に十分目を通し、講師の問題提起の内容を把握する。
 
クラスリーダーは副リーダーと協力して、以下の点を円滑に行う。
 
講師およびクラス担当教員(指定されていない場合もある)と事前に連絡をとり、当日の授業の目標・内容・流れ・運営方法などを考え、演出する。また、他の学生が積極的にこの授業に参加しやすい雰囲気や下地をつくる。この授業は、原則として学生と講師が作りだすことのできる自由度の高さが特徴です。
 
小グループディスカッションを行う場合は、ディスカッションが円滑に行われるよう、学生クラスリーダーは事前にクラスを小グループに分け、班長を決める。
 
講師とクラス担当教員のメールアドレス、電話番号などは別途、クラスリーダーに知らせます。学生クラスリーダーは、教務学生課で、これら情報を入手できます。アドレスなどの情報は、社会通念に準じて取り扱い、講師本人の了承がない限り公開しないこと。
 
クラスの全体討論の司会役をする。そのために、あらかじめディスカッションのポイントを絞り込んでおくことが望まれる。
 
授業終了後、学生アドバイザー支援を得て、クラス全員分のレポートを集め、フロッピーディスク1枚に集約したのちに、プリントアウトとともに教務学生課に提出する。レポート提出の催促役も努める。プリントアウトは学生個人が自分で責任をもって確認すること。
 
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  付録
 
原則として、クラスリーダー・副リーダーは、学生内の互選とする。
 
クラスリーダー・アドバイザーの役目を十分に果たした場合、その努力は最終成績に反映される。
 
将来的に、外来講師との直接交流の体験を生かしてほしい。
 
授業後に希望者による講師との懇話会を開催する(アセンブリ喫茶予定)。選択しなかった講師との交流も可能です。
 
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  [評価]
 受講態度を加味し、レポートを主体に総合的に評価する。
   
  [コーディネーター]
 
 正コーディネーター 堤 ェ 教授(病理学1)
 副コーディネーター 松永佳世子 教授(皮膚科学)、吉田俊治 教授(感染症内科)、松井俊和 教授(臨床医学総論)、 佐藤 労 准教授(倫理学)
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  [担当教員・テーマ・サマリー]
 
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1
鈴木俊夫 (鈴木歯科医院院長、名古屋)
 「口腔ケアと在宅歯科診療 〜喫食障害の改善を目指して〜」
      美味しく食べることは、食べ物を栄養として取り込み、健康を維持・増進できる鍵である。地域で開業している歯科医師は、治療とケアを通して住民の歯科・口腔の健康管理を担っている。
  その活動の成否は、いかに医師・薬剤師・看護職・栄養職・介護職など、また行政・民生委員・介護支援事業所などと連携を図るかである。
  そこで今回、口腔の現状を供覧し、地域で、また、施設でどのように取り組んでいるか紹介したい。
    【日本口腔ケア学会事務局】〒464-0055 名古屋市千種区姫池通3-7-502
http://www.oralcare-jp.org/
http://www.oralcare-jp.org/
 
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2
森 功 (医療法人医真会理事長、大阪府八尾市)
     「医療を考える 〜地域医療崩壊からの再生〜」
      医療供給体制の崩壊が叫ばれている。現実には急性期医療を中心に地域医療は歯抜け状態になっていて、品質の標準化や安全性確保など不可能に近い。国民にとっては基本的人権・生存権が蝕まれている。医療事故からみた再生への道程は実現可能なのか?その推論の前に医学生は事故に内在する"日本の医師のもつ欠落条項"を自ら学ばねばならない。それは規範の欠落、功利・拝金的思考性、閉鎖的種族保存主義であったりする。崩壊から再生は人材養成という観点からしても直近の崩壊に至った戦後63年間とあまりたがわない時間を要する。最近の厚労省等の誤った医療死対応からして再生は行政、医師会などの偽装措置との闘いから始まる。学生は自分たちの未来の危機を捉える鋭いアンテナを磨かねばならない。このセミナーがその一端にでもなれば幸いである。
 
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3
辻本好子 (NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長、大坂)
   「賢い患者学」
     患者が医療に望む基本的なニーズは、「安全で、安心と納得」できることにあります。そのためには、まずは確かな医療技術の提供と、患者の個別性の尊重が大切です。医療側からの一方通行の説明ではなく、患者が知りたいことに応えて情報提供・開示する。患者の不安や疑問に寄り添い、それぞれの患者に個別対応するコミュニケーション能力が医療者に求められます。COMLの電話相談に届く患者のなまの声を紹介しながら、患者が望む医療とは何かを考えます。
 
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4
篠田達明 (愛知県心身障害者コロニー名誉総長、作家)
   「医学史から学ぶ、現代医療への提言」
     わが国の医療はその時々の先進国の医学を採り入れて消化してきた。当初は長らく漢方医学が主流だったが、戦国期には南蛮医学が、江戸期にはオランダ医学がもたらされた。明治維新政府はイギリス医学採用を決めたが佐賀藩医相良知安の猛烈な反対によってドイツ医学に変更された。この結果、プロシア流の軍陣医学が導入され、現代医療に強い影響を及ぼした。戦後はアメリカ医学一辺倒となり医療人はこれを消化するのに忙しく日本医学は伝統的にオリジナリティに欠ける傾向にある。本講では『ドイツ医学はいかにしてわが国に導入されたか』その歴史的経緯をスライドによって供覧し、ドイツ医学導入の功罪、とくに帝国大学で臨床よりも基礎研究重視に傾いたこと、教授を頂点とする医局方式の問題点などについて皆さんとともに考えてみたい。
   
 
5
高柳和江 (日本医科大学医療管理学准教授、癒しの環境研究会世話人代表)
     「笑いと癒しの環境」
     叱咤激励されても、がんばれない、心が打ちふさがれている。こんなとき、ハードでも、ソフトでも自然治癒力だけでなく、自己治癒力が高まる癒しの環境が必要だ。
 クウェートでの10年間の小児外科医としての経験が私を変えた。病んでいるときこそ、人間として尊厳が守られるべきだ。人間として遇されることは当たり前だ。
 一歩入っただけで、安心して、リラックスして、直ぐにケアを受け、元気になり、生きる歓びを感じる。これがあるべき病院だ。社会だ。人間としての当たり前の環境を日本の社会につくろう。癒しの環境研究会認定の「笑い療法士」は現在300人。安全な笑いを患者さんから引き出し、笑いのあふれる病院にしようではありませんか(癒しの環境研究会HP: http://www.jshe.gr.jp/)。
 参考図書1:「死に方のコツ」 小学館文庫、2002
 参考図書2:「生きる喜び・アゲイン」 医歯薬出版、2007
 参考図書3:「人間笑い力」 西村書店、2008
 
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6
大熊由紀子 (国際医療福祉大学大学院教授、元朝日新聞論説委員)
   「インフォームド・コンセントとノーマライゼーション、そしてD&EBM」
     「寝たきり老人」という概念が日本にしかないことを20年前に"発見"した。−−それが、ことの始まりでした。その背景にノーマライゼーションという思想がありました。
 発祥の地、デンマークでは、9割の国民が自国の医療に満足していました。同じ費用をかけているのに日本の満足度は3割、倍も費用をかけている米国の満足度は1割です。一体なぜ?
 海外と日本の医療・福祉現場を映像で示しながら、D&EBMとノーマライゼーション、医療費と医療の質の関係を探ります。DBMは「誇り、尊厳にもとづく医療」。私の造語です。
参考資料:
 福祉と医療・現場と政策をつなぐ「えにし」ネットのサイト、http://www.yuki-enishi.com/ (「ゆきえにし」、または、「大熊由紀子」で検索するとトップに出てきます)の「倫理の部屋」「ホスピスケアの部屋」「優しき挑戦者の部屋」「医療費と医療の質の部屋」「物語・介護保険の部屋」など。
『患者の声を医療に生かす』(医学書院)、『「寝たきり老人」のいる国いない国』『福祉が変わる医療が変わる』(ぶどう社)など。
 
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7
山口真人 (南山大学人文学部心理人間学科教授)
   「人間関係トレーニング」
     本年度はチームワークについて学んでいきます。皆さんは、医療の現場でチームワークが必要不可欠であることは良くご存知でしょう。テレビ映画のERを見ても、多種多様な人々がお互いにコミュニケーションしあって一人の患者さんの命を守っています。もしそのチームのどこかで、大切な情報が途切れたり、誤って伝えられたりしたらどうなるかは火を見るよりも明らかです。適切なリーダーシップが果たされなかったら、責任ある意思決定がなされなかったら、安全に発言できる風土やお互いを尊敬し援け合う風土がなかったら…。それらはみなチームワークの問題です。
 この授業では実際に自分の頭と心と身体を使ってグループワークに参加してもらうことを通して、自分の成長のための勉強の仕方を伝授します。
   
 
8
鮎澤純子 (九州大学大学院医学研究院医療経営・管理学講座助教授)
 
 「患者参加の医療安全」
 
  「患者参加の医療安全」が注目されている。いま医療の現場では、かつてない医療安全の取り組みが進んでいるが、医療従事者・医療機関だけではなく、医療の当事者である患者を含めた取り組みが必要ではないだろうか。世界的に注目された「To Err is Human(1999)」には「医療機関で活用されていない重要な資源は患者である」とある。また、「医療安全推進総合対策〜今後の医療安全対策について〜(2005)」には、その重点項目のひとつとして、「患者、国民との情報共有と患者、国民の主体的参加の促進」があげられている。「患者参加の医療安全」はまさに主体的参加のひとつのかたちでもある。では、「患者参加の医療安全」を単なる問いかけやスローガンで終わらせるのではなく実効あるものにしていくためにはどうしたらよいのか。「患者参加の医療安全」の考え方、そして始める、進めるために必要なことは何かを検討しよう。
 
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9

田辺 功 (朝日新聞編集委員)

 
 「ふしぎの国の医療 〜報道の立場から〜」
 
 日本の常識は世界の非常識とよくいわれるが、医療界の常識もまた、世間の非常識でもある。患者によかれ、と行われている医療行為が本当に役立っているかどうか、欧米ではEBMの観点からの見直しが盛んだ。しかし、わが国では、テレビ「白い巨塔」で象徴される古い体制が改革を妨げてきた。私は数年前、新聞で「ふしぎの国の医療」を連載し、出版した(「ふしぎの国の医療」、田辺功著、ライフ企画、2001、名古屋)。EBMにかなった「患者本位の医療」を医療界の常識にしてほしいから。
 
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10
矢野晴美 (自治医科大学臨床感染症センター感染症科、准教授)
   「日米の医学教育内容の比較」
     医学というサイエンスの領域は、基礎医学、臨床医学ともその進歩、変化のスピードが増し、グローバリゼーションの加速から、「世界に通用する医療」の提供が、要求される時代になっている。そして、そうした急速な情報化時代にタイムリーに対応するため、「学生のニーズ」、「社会のニーズ」、「実践性」、「即戦性」を踏まえた医学教育の提供を先進諸国は模索している。講義は、インターアクティブなディスカッション形式を取り、まず、講師自身が、国内の医学部卒業後、9年弱にわたり、米国環境で、研修医、大学院生、指導医(大学教官)として実体験した米国医学教育をご紹介する。そして、いま、国内の医学部で必要とされている改善点はなにか、また、学生自身のニーズ、社会のニーズはなにかを模索したい。コースの終了時には、学生自身に、みずから、いったいどのような医学教育を望むのか、医学部で何を、どう、学びたいのか、などの理想像を提示してほしい、と考えている。
 
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11
富家恵海子 (日本リサーチセンター取締役)
 
 「院内感染の行方 〜市民の立場から〜」
 
 日本における院内感染防止のMovementはこの15年ほどの歴史しかなく、ほんの緒についたばかりです。わたしの夫が東大病院でMRSA感染でなくなったのは1987年でした。当時、医療関係者の間でも院内感染という名前の認知すらおぼつかなく、防がなくてはけないもの、防ぐことが可能なものというコンセンサスはまだありませんでした。
  わたしが書いた「院内感染」「院内感染ふたたび」「院内感染のゆくえ」という3部作がきっかけになって、さまざまな施策がほどこされてきています。その動きは、日本の医療が医療を提供する側の論理からサービスを受ける側のニーズに目を向けるようになったことと無縁ではありません。院内感染防止の活動を通して、私が日本の医療に感じていることを、お話したいと思います。
 
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12
隈本邦彦 (北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット特任教授、元NHK記者)
 「医師に求められる科学コミュニケーション」
     「わかりやすい説明」とは何だろう。難解な医学用語を使わず、うまい例え話をまじえれば、それでいいのだろうか。しかし、ともすればそういう「わかりやすさ」では、患者は単にわかったつもりになっているだけだったり、誤解をしているにすぎない場合もある。
 NHK記者として医療分野の取材を20年以上してきた立場から、日本の患者の知る権利や自己決定権の現状を振り返った上で、これからの医師に求められるコミュニケーションについて考えたい。例えば、インフォームド・コンセントを「説明と同意」と訳すのは誤訳である。この言葉の本来の意味は、患者がinformed=インフォメーションを得た状態で、患者がconsent=同意するというものであり、あくまでも患者主体の言葉だ。どこにも医師は出てこない。ここでは医師が説明をしたかどうかという「行為」が大切なのではなく、説明の結果、患者が本当にわかったかどうかという「状態」のほうが大切なのである。
 1980年代までは、専門家側から市民にできるだけたくさんの情報を流せば、自然に科学情報への理解が向上すると考えられていた。しかしこうした「欠如型モデル」では情報は効果的に伝わらないことがわかった。それに代わって登場したのが「双方向コミュニケーションモデル」。専門家と市民(医師と患者)が双方向で情報をやり取りし、市民の知りたい「文脈」で、市民の知りたい情報を適切に提供できるというモデルだ。医療の専門家である医師にはそうしたコミュニケーションを作り出す力が求められる。
 後半のディスカッションでは、コミュニケーションスキルの向上のための具体的な方法についても学び、あるべき医師―患者関係についても議論したい。
   
 
13
吉田弘之 (大阪府立大学大学院工学研究科、物質・化学系専攻化学工学分野教授)
     「廃棄物から資源とエネルギーをつくりだす」
     普通の水を高温高圧化してできる「亜臨界水」を用いて、下水汚泥、食品廃棄物、生ごみ、廃木材、廃繊維や廃プラスチックなどの有機性廃棄物を分解、新エネルギーに転換する技術を紹介する。具体的には、魚あらから燐酸カルシウム、アミノ酸、乳酸などの有価物の回収、ホタテの"うろ"から重金属の除去とDHAやEPAを含む油の回収、下水汚泥からの高速高消化率メタン発酵とバイオメタンガスバイクの走行試験、廃木材の油化とバイオエタノールの原料への転換、牛危険部位の無害化、廃繊維の資源化とエネルギー化などについて講義する。
 
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14
勝村久司 (「医療情報の公開・開示を求める市民の会」事務局長)
     「医療被害を考える 〜市民の立場から〜」
     まず、多発している陣痛促進剤による医療事故を例に、薬害・医療被害の背景や本質、さらに日本の医療が抱える問題点を探る。次に、医療裁判の現状や被害の実態について解説し、事故後から裁判を通しての被害者の思いや、カルテ・レセプト開示や病院情報の公開など、医療の情報公開を求めてきた被害者運動の歴史について理解を深める。続いて、情報共有の時代に新たに求められる「インフォームド・コンセント」のあり方や、事故防止のために本当の意味で必要なリスクマネージメントとは何か、またどうあるべきかについて考える。最後に、医療被害者の立場で、厚生労働省の医療安全対策や診療報酬改定に関わる審議会に委員として参加した経験から感じたことについて言及する。
 
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15
池永 満 (患者の権利オンブズマン理事長、弁護士)
 
 「患者の権利」
 
 日本の医療界の中には、十分な情報を得た上で(利用者が)意思決定を行うという原理である「インフォームド・コンセント(informed consent)」の定義上あるいは文法上の主語が「患者」であるということを理解しないまま「(医師が)患者に対するインフォームド・コンセントを行う」等と誤用している者も少なくない。国際的には、インフォームド・コンセントの権利が患者の権利の中核であることや、90年代初頭からあらゆる医療行為においてインフォームド・コンセント原理を遵守することが、医師が遵守すべき最上位の倫理規範であるとされている中で、このような誤解の残存は患者ー医師関係の理解において日本の医療界にきわめて深刻な課題が横たわっていることを示す証左であろう。
 ところで、患者の意思決定を得るために行われた懸命な情報提供にもかかわらず、患者が「医学的に合理性がない」と思われる決定をした場合、医師はなおも説得を続けるべきか、引き下がるべきか、それとも第3の道があるのか。何故に、患者の意思決定に大きな価値を認めなければならないのか。パターナリズムからインフォームド・コンセント原則に基づく医療への転換の背景にある「患者の権利」論、「患者中心の医療」における医療構造の課題と医師・患者関係のあり様を考える。
 販売希望図書:『患者の権利オンブズマン勧告集』明石書店2007年8月30日出版(2,500円、本体価格)、NPO法人患者の権利オンブズマン(092−643−7579)に直接注文いただく場合には、特別価格(2200円税込み)での入手が可能です。
 
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16
矢野邦夫 (県西部浜松医療センター病院感染症科部長)
   「院内感染防止対策」
     この数年、ノロウイルス感染症、狂犬病、鳥インフルエンザといったさまざまな感染症が新聞紙上を賑わせている。一方、MRSAのように従来から問題となっている院内感染病原体の制御について病院は現在も四苦八苦している。多剤耐性菌を含むほとんどの病原体の制御のために最も重要な感染対策は手指衛生(手洗いやアルコール手指消毒)であることが明らかであるにも拘わらず、多くの医療従事者は満足な手指消毒を実施しているとはいえない。手指消毒の重要性の認識を新たにすることは、医療の質の向上にきわめて重要である。セミナーでは感染対策の盲点を指摘しながら、手指消毒の必要性についてディスカッションしたい。
   
 
17
舩木良真 (三つ葉在宅クリニック院長)
     「在宅医療の新しい可能性」
     「在宅医療」と聞くと、皆さんはどのようなイメージをもたれるだろうか。「古い医療」「田舎の医療」「農業のような感じ」など、さまざまなことを想像される方がいる。実際の在宅医療とは何なのか、これからどこに向かっていくのかを、マクロな視点から社会の変化をとらえ、在宅医療の実際や可能性を、映像を使いながら説明をさせていただきたい。社会構造の変化、医療費問題などから在宅医療の必要性が語られているが、いまひとつ押しつけられた感じのある理論が展開されている。しかし、現場で働く医師として、在宅医療のイメージに「ITの活用」「プロフェッショナル」「グループプラクティス」など、創造的な新しいキーワードも浮かび上がってくることを期待している。
 
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18
宮良球一郎 (宮良クリニック院長、沖縄県那覇市)
 
 「新離島医療」
 
 学生の皆さん、多くの島からなる沖縄はまさしく離島医療の最前線です。一方EBMを実践しやすい場所でもあります。今回、離島医療の問題点を掲げ、魅力溢れる未来医療「新離島医療」の実験エリア「沖縄」をのぞいてみて下さい。
(現在・未来)

1. 救急医療体制の充実(救命救急センター、救命ヘリ、IT、etc)
2. 離島医療へベテラン医師赴任による医療レベルの向上、行政のバックアップ
3. 研修施設の充実による「沖縄」という離島医療の魅力
4. 沖縄型離島医療は僻地医療ではなく、沖縄はチーム医療が実践できる未来型医療の実践場所
5. 本土でしばしば問題となる大学間や病院間の占有権争いがなく、病診連携の充実等で沖縄本島が一つの医療体系となって活動できる。
6. 私の専門分野(乳癌領域)では、「沖縄から世界へ」を合い言葉に新しい形のチーム医療を形成
(問題点)

1. 「Dr.コトー診療所」のコトー先生へのあこがれと失望
2. 住民の離島離れと高齢化
 
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  19 馬原文彦 (馬原医院院長、徳島県阿南市)
     「地域医療とアカデミズム」
 
 地域医療と云うと、学問や高度医療の第一線を退き、ゴルフや趣味に生きる道を選ぶかのように思う人もいる。ところが、現実は大学や教育病院とちがって、地域医療の現場では自分ひとりで決断を迫られることも多く、むしろより幅広く勉強をする必要がある。私は無医地区で開業して後に、診療の傍ら当時日本には無いといわれていた紅斑熱群リケッチア症を発見し、日本紅斑熱と命名、その疾患概念を明らかにしてきた。本講義では、一つの臨床上の疑問から解決に向けてのプロセスを科学的に検証し、開業医としての地域医療における役割と科学者としての医師の立場を学生諸君と対話したいと考えています。

1.第一線診療とサイエンス
  ・地域に根ざした医療・福祉の発信、専門性と研究、生涯学習
2.地域医療と医師
  ・地域医療・介護医療:医療施設、福祉施設の種類と役割分担
  ・医師と地域社会:学校医、健康スポーツ医、産業医、健康講座
  ・地域社会との交流:医学講演会、文化の共有(阿波踊り、陶芸、短歌)
   
問1.医療機関、福祉施設:どのような形態が考えられるか(どのような種類があるか、それぞれの役割)。
問2.あなたは地域医療の担い手です。 望ましい医師像とは?思いっきり自分の理想を語ってください。    
問3.地域との関わり:あなたならどう発信しますか。
   
★ 見学にいらっしゃーい!当院にて研修者の特典:日本紅斑熱の第一号患者さんとツーショット写真が撮れます。だいぶん高齢になられたので期間限定です。
 
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20
錦織信幸 (長崎大熱帯医学研究所)
     「国際医療協力」
     国際医療協力と聞いたとき、どのような活動を思い浮かべるでしょうか?自然災害や紛争などで危機にさらされた人々に医療を提供する緊急援助活動、予防接種活動や感染症対策など国際的なレベルで行われる公衆衛生活動、特定の専門技術について途上国の医療従事者を指導する活動など、その形態は非常に多岐にわたります。本セミナーでは、国際医療協力についての知識を深め、より具体的なイメージをもてることを目的とします。
 途上国における公衆衛生対策においては必要とされる基本的な考え方は、医学部で中心的に学ぶ臨床の考え方とは大きく異なります。限られたリソースをつかっていかに効率よく人々の健康に貢献していくか― 途上国における公衆衛生対策の考え方と方法論はこれからの日本の医療にも大きな示唆を与えてくれます。
 セミナーでは、国境なき医師団や国連児童基金(UNICEF)における講師自身の経験にもとづいた実例を用いて、受講生自身が考え議論するグループワークを行います。受講生の積極的な参加を期待します。
 
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21

佐伯晴子 (東京SP研究会代表)

 
 患者の視点で考える医療コミュニケーション」
     医療の主語は誰か? あるいは、インフォームド・コンセントの主語は誰か? 愚問とも思えるこの質問に、今のわが国の医療現場は間違った答えを用意している。あなたやあなたの大事な人も必ずケガや病気に見舞われる。そのとき、あなたは医師や看護師ほか多くの医療者が働いてくれているのはわかるが、あなたが説明を受けて納得して医療が進められていると感じる場面はどれくらいあるだろうか。患者中心の医療という言葉を現実のものにしなければならない。その責任は今を生きる私たち全員にある。まず、患者を主語に考えることから始めよう。
 
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22
加藤良夫 (南山大学法学部教授、「医療被害防止・救済システムの実現をめざす会」代表)
   「医療事故を考える 〜医療被害者救済の立場から〜」
     学生の皆さんは、医療事故の報道をどのような思いでみていますか?将来、医師となって、もし自分が医療事故を起こしたときにはどういうことになるのだろうか、と不安になることがあるかもしれませんね。医療裁判の仕組みや、どういうときに刑事事件になるのか、ということについてもお話します。何より、被害を受けた患者さんの思いはどのようなものか、事故を起こさないためにはいかにあるべきか、事故後の正しい対応、について学んで欲しいと思います。さらには、安全な医療をつくっていくために、何をどう改善すべきかについても一緒に考えてみたいと思います。患者側弁護士30年の経験を踏まえ、これらのことについて事例を示しつつ、わかりやすくお話します。
 
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23
勝又義直 (科学警察研究所所長、千葉)
   「異状死体取扱い制度」
     病死や老衰などの自然死の場合は、医師は死亡診断書あるいは死体診断書を遺族に発行する。しかし、死体を検案して異状を認めた場合は、異状死体届出義務を定めた医師法21条に基づき、所轄警察署に届け出なければならない。異状死体は、全死体の約10%となっている。一方、日本では、公衆衛生上の観点から、届け出られた異状死体を検案し、犯罪の恐れはないが死因が不明の例について解剖して死因を究明する制度がある。これを監察医制度といい、東京、大阪、神戸、横浜、名古屋で行われている。このような異状死体の取り扱いの制度について解説する。
 
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24
井形昭弘 (名古屋学芸大学長)
   「長寿社会と尊厳死」
     わが国は極めて短期間の間に世界一の長寿国となった。そもそも長寿社会の創造は人類がはじめて経験する大事業でわれわれは自らの手で未来を創造すべき責務を担った。その長寿社会では、死の問題は避けられず、死に対する対応も未来への1つのステップといえる。
 現在わが国で尊厳死が論議されているが、その理解を深め将来の医療現場での良き対応のために尊厳死の法制化、自己決定などの問題について討議を進めたい。
   
  25 森 千里 (千葉大学大学院環境生命医学講座教授)
   「胎児の複合汚染対策から始まった環境改善型予防医学:ケミレスタウン・プロジェクト」
     現在、私たちは、数え切れないほどの化学物質に取り囲まれて日々生活し、これらの化学物質を知らないうちに体内に取り込んでいる。我々は、臍帯(へその緒)を用いた調査で、現在の日本人の胎児は、ダイオキシン、PCB、DDT類などの複数の環境汚染物質に曝露されていることを明らかにした。
  つまり、胎児の段階から我々は化学物質に複合汚染されているのである。環境ホルモン等の化学物質による人への健康影響は、大人より子供、特に胎児への影響が危惧されており、胎児の複合汚染が、胎児の正常な発生や発達、出生後の健康に影響を与えているのではないかという懸念が近年報告されるようになった。そのため、我々は化学物質問題への対応として、因果関係が明確でなくとも予防原則に則って対応するべきと考え、最も影響が危惧される胎児や未来世代を対象とした環境予防医学の確立を目指した。
  そして、子供たちや未来世代への悪影響を与える環境要因を減らし、次世代の健康増進とQOL(生活の質)の向上を目指した研究や対応を行う次世代環境健康学プロジェクトを開始した。さらに、健康に悪影響が心配される化学物質を極力削減したモデルタウンを形成し、社会に向けて環境予防医学の必要性を訴えるケミレスタウン・プロジェクトを開始した。これまでの研究の流れを時系列にお話し、問題解決型の予防医学プロジェクトについてディスカッションしたい。
 
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26
澤田富夫 (さわだウィメンズクリニック・名古屋不妊センター院長、名古屋)
    加藤英明 (横浜市立大学病院後期研修医)
     「生殖医療 〜実践者と体験者から学ぶ〜」
     生殖医療は体外受精・胚移植技術の開発、さらにそれに続く顕微授精の進歩により劇的に変化した。これらの技術は、一つの卵子と精子を人工的に操作することにより新たな生命を誕生させることを可能とした。その結果、多くの不妊症患者に光明をもたらしたが、一方では代理母に代表されるような、本来の夫婦関係を超えた法律的問題が浮上した。さらに、近年の胚操作技術の向上によって着床前胚診断が可能となり、生命の選択という新たな問題が出てきた。産まれてくる子供は誰のものなのか。子供のアイデンティティとは何か。
 これまでの生殖医療進歩の流れをお話しし、生殖医療現場を実際に見学していただき、それに伴って発生してきたさまざまな倫理・社会・法律問題を討論する。
   
 
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柘植勇人 (つげ耳鼻咽喉科院長)
     「趣味を地域医療に生かす」
     ストレスという測定不能な要因が、明らかに症状に検査値に影響しているとしか思えない症例。日々の診療において決して珍しいものではなく、知識、技術では追い付かない何かが医師に求められていることを痛感する毎日であります。
 近年「癒し」という括りのもと、音楽療法、アロマセラピーといった、まだ医療とは呼べないでしょうが、その何かを臨床に生かそうという動きをよく耳にします。「笑い」もその括りの中にある様で、免疫細胞、血糖値、除痛等への影響が報告されています。そこで私の趣味「落語」です。300年かけて日本人が作り上げた笑いの集大成。これを使って、単なる医療以外の何かを地域に提供したい。「無床診療所」を「有笑診療所」にしてしまおう。
 そんな思いから始めた院内落語会、市内各公民館での健康講座と落語の会。今回、医者の演る落語の実演を含め、ご紹介したいと思います。
 
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紙屋克子 (筑波大学人間総合科学研究科教授)

     「人間の尊厳とヒューマン・ケア 〜チーム医療と看護〜」
     意識障害は、脳性一次障害のほかに、循環器・呼吸器系疾患、代謝障害などさまざまな原因によって生ずる。原疾患に対する積極的な治療にも拘らず、意識障害が遷延化した患者の効果的な治療と看護については、いまだ十分な確立をみていない。意識障害が遷延化すると、家族にも精神的、身体的、あるいは経済的に大きな負担を強いることになり、社会の偏見なども加わって、生活破綻に追い込まれる家族も多くみられる。
 今日、尊厳を持って死ぬ権利や、脳死患者からの臓器移植が論議されるときの対象として、遷延性意識障害患者が挙げられたこともあり、意識障害患者と脳死患者との区別を明確にする必要性も生じてきており、遷延性意識障害患者の問題は医学的、社会的、倫理的側面への幅広い拡がりをもつ問題として、その性格を強めつつある。
 従来、医学的に「意識の回復は極めて困難である」と判断された患者については、看護活動も生命維持や身体機能の調整といった消極的なものにとどまる傾向があった。しかし、急性期からの計画的な看護支援を展開することで、近年は回復例も多く見られるようになった。人間としての尊厳ある生命と生活を保障し、社会復帰させるための効果的な看護支援方法とチーム医療における看護の位置づけ・と専門性などについて討論したい。
 
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恒川 洋 (恒川クリニック院長、名古屋、東海ホリスティック医学振興会会長)
   「ホリスティック医学」
     現代西洋医学は20世紀の近代科学、とくに分子生物学などの飛躍的な発達に伴って目覚ましく進歩しました。しかし、糖尿病などの生活習慣病、がん、心身症、精神病、老人性痴呆などは急増しています。これら内因性あるいは心因性、退行性疾患の増加は、機械論的な生命観に基づいて局所を分析的にみつめる西洋医学の問題点や限界を表わしているのではないでしょうか?
  では、普遍性と標準化を求めるあまり画一的で人間不在に陥りがちな西洋医学の欠点を補うために、どのような医療が必要でしょうか? 近年、病気や人間を全体的・包括的に"まるごとに"捉えるホリスティック医学が注目されています。21世紀の医療には、人間の多様性と個別性を重視し、「人間の尊厳」を第一に考えるホリスティック医学が必要不可欠ではないでしょうか?
 この講義では、ホリスティック医学の観点から「健康とは?」「病気とは?」「患者とは?」「医師とは?」「医療とは?」「患者と医師の関係性」などについて、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。
 
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真野俊樹 (多摩大学医療リスクマネジメント研究所教授)
   「医療制度」
      古来「医は仁術」という、仁術という意味は経済法則に従わないという意味である。しかしながら、いまや「赤ひげ」の時代は遠く去ったと言われ、逆に医療関係者の間では「医療砂漠」の時代がきたのではないかといわれる。もちろん、医療が営利目的のみで行われていると考える人は少ないだろう。しかし、日本の医療が民間の力を中心に成り立っている以上、採算を無視して行うこともまた難しい。本講演では下記のテーマを扱う。
 講演内容:@医療を支える制度の仕組み、A仕組みの国際比較、B日本の制度の問題点は何か、Cあればその解決策は。
参考図書(真野俊樹著):@日本の医療はそんなに悪いのか(薬事日報社)、A医療マネジメント(日本評論社)、B医療マーケティング(日本評論社)
 
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阿部康一 (医療事故市民オンブズマン メディオ代表)
 「医療事故 〜市民の立場から〜」
     前半に、医療事故の被害者が法的行動に至った理由、および医療事故が被害者に及ぼした影響、さらに医療事故市民オンブズマンの活動についてお話しする。
後半は、具体的な医療事故報告書に基づきグループごとに下記テーマについてディスカッションし、発表する。
(1) 医療事故前後の病院側の問題点
(2) 医療事故の発生原因と再発防止策
(3) どのように医療事故被害者に対応するか
(4) 医療を離れ、一市民としての社会への貢献テーマを考える
資料:「医療事故と診療上の諸問題に関する調査報告書」(2003年 医療事故市民オンブズマン メディオ発行)
 
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岸本寿男 (国立感染症研究所ウイルス第一部第5室室長)
   「音楽の医療・福祉現場での可能性」
     あなたにも音楽で心が震えるほど感動した経験はきっとあるだろう。音楽は古来より人の魂を揺り動かし、癒す力を持つことはよく知られ、現代の複雑でストレス過剰な世の中においてはますます重要になってきた。近年、その効果をさらに意図的に治療に用いる音楽療法も注目されている。その応用範囲は医療、福祉、教育、芸術に広くまたがる大きな可能性を秘めた分野である。演者はこれまで医療現場や福祉施設での音楽活動を通じて、音楽の癒しの力や有用性を実感してきた。それらの事例や実際の音源、さらに演奏なども紹介しつつ、医療における音楽の役割や可能性について一緒に考えてみたい。ダウン症ピアニストの越智章仁氏(第36番目の講師)、乳がん患者の寺田佐代子氏(第37番目の講師)との共演を予定している。お楽しみに。
 *内科専門医である岸本寿男氏は、わが国のクラミジア感染症研究の第一人者でもある。性感染症学会理事のほか、2004年の音楽療法学会会長も務められた。尺八演奏の名手で、1995年に米テレビ番組の挿入曲で「1994年度北西部地域エミー賞作曲賞」を受賞している。
 
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出河雅彦 (朝日新聞編集委員)
   「医療の安全 〜報道の立場から〜」
      「質が高く安全な医療の実現」は国民の切実な願いであり、政府の医療政策においても最も重要なテーマとなっている。起きた事故の原因をきちんと解明することが再発防止の第一歩であるという問題意識から、個別の医療機関だけでなく、国や学会など、さまざまなレベルで事故の原因や背景要因を解明しようという動きが広がりつつある。「検証する文化」を医療現場に定着させ、質の高い医療システムを作り上げるためにはどうしたらよいだろうか。一緒に考えてみたい。
 
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大鐘稔彦 (南あわじ市国民保険阿那賀診療所院長、作家)
   「専門医かプライマリ・ケア医か?」
     医療の分野での細分化は著しい。昔は内科医といえば内科全般をこなしたし、外科医といえば消化器のみならず、胸部や泌尿器科、さらには婦人科の領域までこなすオールラウンドの外科医が少なくなかった。
 一方で、極度に分化した専門医制への疑問や批判も噴出しはじめている。祝日や終末の日当直を担う医師が、専門外だからと急患を拒絶する例があとを絶たない。患者がたらい回しされたあげく、死に至るケースもあり、医療訴訟が多くを数えている。
専門医ばかり溢れて、オールラウンドの医療が求められる過疎地の医療に従事する医者が大幅に不足していることもあげつらわれている。この問題の解決は、次世代を担う若い医学徒の双肩にかかっている。
 *大鐘稔彦(高山路爛)氏は、淡路島で地域医療に携わる傍ら、「孤高のメス:外科医当麻鉄彦」、「ザ・レジデント」、「青ひげは行く」、「患者を生かす医者、死なす医者」、「無輸血手術」、「外科医のセレナーデ」、「誤診」、「実践のプライマリ・ケア」、「わが愛はやまず〜罪なき者、石をもて〜」、「罪ある人々」など多数の著作をもつベストセラー作家でもある。
 
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近田真知子 (地球市民ACTかながわ/TPAK代表)
   「国際協力と医療 〜アジア少数民族の子どもたちの支援を通して〜」
     世界には、学校に行きたくても行けない子どもたちが日本の人口と同じくらい(1億2千万人)いるのをご存知ですか? その理由のほとんどが、貧困です。
 地球市民ACTかながわ/TPAKは、そのような子どもたちが一人でも多く教育を受けられるようアジアで活動しています。私たちの活動地であるタイ、ミャンマー、インドの山岳部には、貧困で教育が受けられないために厳しい状況に置かれている少数民族の子ども達がたくさんいます。また、衛生の意識がないために死んでいく子どもや、充分な医療が受けられず泣いている子ども達がたくさんいます。このような子どもたちが明るい未来を開くためには、医療の知識や技術を持った人の支援が、何より必要です。
 国際協力というと遠い世界の事に感じますが、実はほんの少しの行動で、大きな効果が生まれる事もあります。
 藤田保健衛生大学医学部の先輩や教授が、海外で活動する姿などの写真も見ながら、医療従事者として、どんな国際協力活動が的確で有効か、考えて見ましょう。子どもたちの自立を促し、支援する私たち自身も視野を広げ成長する協力活動の手法とは?
 
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越智知子、越智章仁 (ダウン症ピアニストの母子)
 「患者の気持ち1.ダウン症を乗り越えて」
     29歳の長男、章仁はダウン症の障害をもっています。9歳から始めたピアノは、彼に与えられた数少ない能力となり、それは言葉以上のコミュニケーションをとってきました。オリジナル作品は知識からではなく、すべて彼のセンスによって生まれたものです。
 筋力が弱く、本来ピアニストには向かないと言える息子との20年という練習の日々は、若くして亡くなった主人からの贈り物の人生と思い、ささやかな演奏活動ができることを感謝しています。当日は、章仁のピアノ演奏と、母であり彼の教師でもある私のお話もさせていただきます。よろしければ、彼が作業する私立作業所「ほっとハウス」のHPをごらんください。
http://www.you-can.co.jp/hot/
 
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寺田佐代子(藤田保健衛生大学病院、乳がん患者会"わかば会"会員)
  「患者の気持ち2 乳がん患者からのメッセージ」
    どのようにがんと向き合って生きていけばいいのでしょうか・・・
・・・自分と向き合い、自分を見つめ、癒していく・・・
・・・患者会にはがん患者が相互に支えあえるピアサポートがあります・・・
1、患者会発足と活動の紹介
患者会は医療者との交流から信頼関係をつくる場 〜テーマは「輪の和」〜
2.オーストラリアのがん患者のためのサポートプログラムに参加した体験から
  日本との比較、セルフケア、ピアサポートの薦め、「こころのセルフケアノート」紹介
  リラクセーションとしてのmeditation紹介 →みんなで10分間体験してみる
3.患者が傷つく医療者の言葉紹介とその考察(患者へのアンケート調査より)
4、問題提起
  @ 患者会の意義とその効果は何か?
  A 患者と医療者のパートナーシップとは?
  B 患者と医療者の双方向コミュニケーションとは?
ブログにアクセスしてみてください http://blogs.yahoo.co.jp/yuuteen0510
 著書:「がんをポジティブに生きる、セルフケアのすすめ」(新風舎、2007、\800)
 
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宇佐美 治 (国立療養所長島愛生園入所者)
    牧野正直 (国立療養所邑久光明園、園長)
     「患者の気持ち3.人間回復のかけはし −ハンセン病の歴史に学ぶ−」
     どんな病気であっても、患者の人権は守らねばならない。
 病気に苦しむ人を社会から排除し、関心の外に置くことは、病気ばかりでなく病気にかかった人にまで、偏見や差別を生むことにつながる。
 一つの法律ができたことにより、その病気と病気にかかった人たちが、社会から排除されて関心の外に置かれてしまった。その病気とはハンセン病で、一つの法律とは明治40年法律第11号「癩予防ニ関スル件」に源を発する「らい予防法」である。この法律は89年間という長きにわたり継続され、その間、ハンセン病患者の人権は著しく蹂躙されつづけた。数えきれない悲劇が患者本人ばかりでなく、その家族、親族にまでおよんでしまった。
 ハンセン病の歴史から、間違った医療政策はどの様な結果を生んでしまうのかを理解し、二度と同様の間違いをしないために、何をしなければいけないのか考えたい。
 
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藤本 栄 (愛ライフ株式会社代表取締役、ALS人工呼吸器装着者)
  藤本友香 (栄さんの妻、通訳)
    「患者の気持ち5.ALSを知ってほしい」
    次のような諸点について、みなさんに考えてほしい。
 1. ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者の発病から呼吸器つけるまでの心模様(10分)
 2. 病気の受容と社会復帰にいたるまで(10分)
 3. 告知のタイミングと告知後の気持ち(15分)
 4. 中京テレビ「ALSを楽しく生きる」(ビデオ、15分)
 5. 心の医療がもたらす効果スピリチュアルな真実(ADL)(10分)
 6. 患者が医師に望むこと(10分)
 7. もし、あなたがALSになったら?ALSを楽しく生きるヒント(ALS総括)
 生きる真実(15分)
 
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萩生田千津子 (車いす女優)
   「患者の気持ち6.何故、命を助けなければならないのか、何故、命を守らなければならないのか」
     人間の尊厳、人としての存在意味、人としての在り方…etc、難しく言い出したら切りがない。ただ、ひとつ、優しい言葉で言えるとすれば、今、命をもらって生きているという事実である。生まれたということが事実であるなら、死ぬということも事実。だとすれば、この事実をどう受け止め、次代にどう繋いで行けば良いのか…。人間は全て生きる権利を持って生まれている。それを奪う権利は誰にもない。どんな人も、間違いなく、全て母という人から生まれてきた。その人間として生まれた自分を、どこまで愛せるのか。自分をどこまで信じることができるのか。自分をどうやって癒やすことができるのか。その結果が、全て他人に向かう…。生きるということを、お互い一人の人間として、一緒に考えられればと思います。

*萩生田千津子さんは自動車事故で頚髄損傷を受傷後、車椅子生活をされている。動かせる上半身を可能な限り利用して、発声訓練を積み重ね、現在、声優としてみごとに活躍中です。

教科書等
 [教 科 書] 特になし
 [推薦参考書] 特になし
 [使用教室]  生涯教育研修センター1号館、各講義室、フジタホール500ほか。


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