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教室の概要
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1.教 育

(1)学部教育
 現在、病理学の講義・実習は第2学年の後期科目として行われ、第二病理学教室(一部病理部)と分担している。当講座では総論と病理学実習を担当している。第3〜4学年では臨床系統講義の一環として、呼吸器、消化管、内分泌、感染症、皮膚の分野の一部を受け持っている。第4学年末のCM-basic(まとめ講義)にも参加している。第5学年のポリクリにおいては、臨床検査医学の中で病理部と協力して、毎週水曜日に術中迅速診断も含めた病理診断の実際を見学・体験させている。

 CM-Tではリスクマネジメント、患者の権利に関する項目、CM-Uでは、国家試験対策としての病理写真の読み方に関する講義・演習も担当している。また、1年生のアセンブリ、2年生のHuman Biology、統合基礎医学(科目責任者:堤、千田)にも参加している。

 統合基礎医学は2006年より再編され、Aコース「基礎から臨床へ」(責任者:堤)、Bコース「ニューロサイエンスの基礎」(責任者:千田隆夫.解剖学)が新設された。2008年度もAコースは肥満、敗血症、インフルエンザをテーマに計12コマが実施される。

 2005年度(平成17年度)からは3年生の病理学各論は、臓器、系統別講義に割りふられ、各論実習は廃止された。その代わり、2006年4〜5月に4年次を対象にコンピューター学習室で「病態病理演習」が開始された。このうちの半分(8コマ)を当講座が担当している。症例提示によるコンピュータを利用した学習を実践している。2008年度から、一部バーチャルスライドを利用するようになった。

 堤は2005年度より新たに始まった3〜4年生の科目「医療を考えるセミナー」の責任者であり、2007年度はのべ52名の講師陣(外来講師41、内部教員11)による、small group discussionが活発に行われた。2008年度からは3年生のみの科目となり、外来講師計40名による問題提起型授業が実施されている(内部教員は不参加)。HPに詳細を記載しているので参照してほしい。

 COEサマーステューデントから継続して、COE学生に登録した2名の学生(M3、M4)を指導し、うち1名(M4)は3月のCOE研究発表会でプレゼンテーションを行った(2006年、2007年)。また、医学教育学会生命科学教育委員会が夏休みに主催した基礎統合実習を毎年支援している。

 夏休みのボランティア活動として、堤、佐藤労准教授(倫理学)、市原慶和教授(衛生学部)が学生を引率して岡山県瀬戸市内の国立療養所邑久光明園を訪問し、施設見学、入所者インタビューとともにボランティア演奏をおこなっている(毎年)。

(2)大学院教育
 大学院生の水谷泰嘉(薬剤師)は2005年来COE院生に登録し、潰瘍性大腸炎の病変局所で産生される抗体の解析ならびに酵素抗原法の確立を主なテーマとしてCOEプロジェクトの研究に従事した(20007年度で終了)。2006年4月より、柘植信哉(歯科医)が社会人大学院生として参加、COEプロジェクトにも一部関与した。口腔内常在菌であるPorphyromonas gingivalisに対する免疫反応に関して、歯根嚢胞をターゲットとして解析している。2007年4月からは、リウマチ感染症内科研究補助員の玉熊桂子(臨床検査技師)が社会人大学院生として参加している。日本紅斑熱(毎年死亡例がある)の早期診断を、免疫組織化学、real-time PCRならびにin situ hybridization法を用いて確立するのがテーマとなっている。

 当講座の教室員と臨床サイドの共同教育の場として、消化器外科グループ、皮膚科、産婦人科、耳鼻咽喉科などの臨床科との打合せ会を不定期に催している。研修医を対象とする剖検症例検討会(CPC)は毎月定期的に実施されている。

 毎週金曜日早朝に実施している研究ミーティングを大学院授業の一環と位置づけ、実質的な研究指導が行なわれた。その他、大学院セミナーとして、「病理学セミナー」を2008年1月に2度施行した。2009年にも実施予定。

(3)本学専門学校教育
 看護専門学校、短期大学の講義・試験等も行っている(教室員分担)。

(4)他大学・他施設における講義
 堤が浜松医科大学、島根大学医学部、東海大学医学部、名城大学薬学部、星城大学経営学部、稲田が愛知医科大学で講義・試験等を担当している。

(5)社会活動、地域社会への関わり
 学外活動では、堤が「医師国家試験対策」、「感染症の病理」、「感染症の細胞診断」「酵素抗体法の病理診断への応用」、「院内感染防止対策」、「医療廃棄物適正処理」、「医療におけるセイフティーマネジメント」、「医療における病理診断の役割」「正常と疾病」などに関する教育・啓発活動を、他大学、病理・細胞診関連の学会や患者団体などを対象に活発に行っている。

 科学技術専門ネットワーク調査員(文部科学省)、日本宇宙フォーラム評価委員(文部科学省)、東京都医療廃棄物適正処理推進協議会副議長、東京都監察医務員外部評価委員、宇和島徳洲会病院・病腎移植外部評価委員を兼任している。

 病理診断のセカンドオピニオンを積極的に行い、主として乳癌患者にアドバイスを行った。医療裁判の鑑定も積極的に受け入れている(堤)。

(6)各種委員会等大学教育管理活動
 学内委員会としては教務委員会、倫理審査委員会、M1-M2コアカリ検討委員会、M3-M4コアカリ検討委員会委員、卒試総合試験委員会委員などを兼務している(堤)。また、オープンキャンパスにも積極的に参加している。

(7)ファカルティディベロップメント
 堤がオーケストラ部の医学部部長教員を務めている。2006年度には「学生アセンブリ同好会」の設立が承認された(医学部部長教員:堤)。医学教育企画室主催のFD(創設者:臨床医学総論・松井俊和教授)およびAED講習会に稲田准教授が参加した(2007年)。

2.研 究
 当講座は診断病理業務に加えて、人体病理学を主体としたさまざまな研究を行っている。主なテーマは以下のとおりである。
@ 外科病理学的立場からみた各種腫瘍の組織発生と組織形態学的検討
A アポトーシス・薬剤耐性関連蛋白の免疫組織化学的検出による癌補助療法の有効性予測
B 免疫組織化学染色およびアポトーシス組織化学における反応性賦活化に関する技術的検討
C 細菌ゲノムに対するin situ hybridization法の感染症病理診断への応用
D 日本紅斑熱の生検病理診断、PCR検索、全身病理所見の検討
E 諸種感染症における病原体の同定と病理診断コンサルテーション
F ピロリ菌感染胃粘膜と発癌(スナネズミを用いた実験系)
G ウメ抽出物を用いたピロリ菌感染と胃癌発生(スナネズミを用いた実験系)抑制効果の検討
H ヒト消化器癌の細胞分化
I 消化器癌抗癌剤耐性・感受性に関する免疫組織化学的解析
J 消化器癌細胞およびEBウィルス感染細胞がつくるmicroRNAの組織化学的同定
K 褥創における細菌感染症の解析と正しい褥創管理法の確立
L 形質細胞浸潤の目立つ病変組織からのヒト由来モノクローナル抗体の分離(対象:炎症性腸疾患、実験潰瘍性大腸炎、歯根嚢胞、関節リウマチ、HRPないしPorphyromonas gingivalis免疫動物の所属リンパ節・脾臓)
M 酵素抗原法の確立(以下参照)

 Mの「酵素抗原法」(標識抗原をプローブとして、組織内の特異抗体産生細胞を同定する組織化学的手法で、酵素抗体法の裏返し)については、これまで本学総医研免疫学の黒澤良和教授との共同研究で、標的となる抗原の選定をすすめてきた(黒澤研の人工抗体ライブラリの技術を利用)が、2008年度からは、愛媛大学工学部の遠藤弥重太教授、澤崎達也准教授の研究室で開発された技術、タンパク抗原ライブラリ作製技法を利用させてもらえることになった。

 cDNAから無精製で一度に多種のビオチン標識抗原を作製することができる。病変局所に浸潤する形質細胞がつくる抗体に反応する抗原を選ぶことで、「酵素抗原法」のターゲットプローブが選択できると考えている。これからの挑戦である。

 このほか、多くの臨床領域に病理学的立場から広くアドバイスを与え、協力している。皮膚科、外科、産婦人科、消化器内科、耳鼻咽喉科といった臨床科の大学院生や技術員が活発に研究室を利用している。

 実験手段としては、酵素抗体法を用いた免疫組織化学的手法を基本として、PCR,real-time PCR,RT-PCR,in situ hybridization法、アポトーシスの組織化学などを取り入れた分子病理学的なアプローチを利用している。

 共同研究として、上部・下部消化管外科との間で胃・大腸癌の5-FU感受性の抵抗性に関する共同研究が活発に行われている(鴨志田伸吾、2008年4月より神戸大学医学部保健学教授、が中心となって推進している)。

 学外では、東海大学医学部総合診療学系病理診断学部門、国立感染症研究所、東京大学医科学研究所、和歌山県立医科大学、国立療養所邑久光明園(岡山県瀬戸内市)、紘仁病院(名古屋市)と研究面での交流がある。

 堤は、このほかに、院内感染防止対策、医療廃棄物適正処理、医療におけるセイフティーマネジメント、患者の権利・所有権、医療分野における物流・病院管理ロジスティクスや病腎移植にまつわる諸問題に関する研究・提言を行っている。


3.診 療
 第一教育病院における全病理検体について、病理部の管理のもとに、術中迅速診断を含む病理組織診断ならびに細胞診断を行っている。病院の年間業務は、外科病理約10,000件、迅速検体約700件の組織診断と約15,000件の細胞診検体である(ただし、下村龍一助教が退職した2008年8月から、生検に関するルーチン業務への寄与は限定的となっている)。病理解剖(年間約60件)は医学部病理系教員全員で分担している。

 病院関連の学内委員として院内感染防止委員会、ICT委員会、廃棄物処理委員会、環境保全委員会、院内情報処理委員会(承諾書委員会)、市民公開講座実行委員会(2008年より委員長)を兼務している(堤)。

 病理診断の委託研究事業として、岡崎医師会公衆衛生センター(年間約3,600件)、SRL(年間約1,300件)、東海細胞研究所(年間約1200件)、東京セントラルパソロジーラボラトリー(年間約1,600件)の外部病理検体の病理診断を行っている。

4.対外活動
 堤は2007年度まで(社)日本病理学会の理事(教育委員会委員長兼務)として、病理診断の質の向上、病理医の地位の確立、患者さんに顔のみえる病理医のあり方、病理検体の所有権、病理医のリクルートなどに関する活動を行ってきた。
 現在は倫理委員会委員、病理専門医部会報編集委員会委員、コンサルテーション臓器別チーム責任者を担当し、活動している。

 乳癌患者団体との交流を積極的に行い、病理診断のセカンドオピニオンを無料で受けている。乳癌患者のメーリングリストteddyメンバーとして、また大学病院の乳癌患者会「わかば会」に積極的に参加して、「患者さんに顔のみえる病理医」を実践するかたわら、趣味のオーボエを患者さんといっしょに楽しんでいる。そのほか、乳がん患者会のソレイユ、ブーゲンビリア、イデアフォーとの交流もある。

 その他、患者の権利オンブズマン東京、患者の権利法をつくる会、COML(賢い患者の会)、医療の安全に関する研究会(常任理事)、医療廃棄物適正処理協議会(副議長、東京都医師会主催)、医療分野におけるロジスティクス研究会にも参加している。

 東京都監察医務院外部評価委員、宇和島徳洲会病院外部評価委員(終了)を兼任している。
(文責:堤 寛)


2007年 業績

[原著(英文)]
Tsutsumi Y.
Histopathological diagnosis of infectious diseases using patients' sera.
Seminar Diagnost Pathol 24(4):243-252, 2007

Kamoshida S, Suzuki M, Shimomura Y, Sakurai Y, Komori Y, Uyama I and Tsutsumi Y.
Immunostaining of thymidylate synthase and p53 for predicting chemoresistance to S-1/cisplatin in gastric cancer.
British Journal of Cancer 96: 277-283, 2007

Shimomura R, Tsutsumi Y.
Histochemical identification of Methicillin-resistant Staphylococcus aureus: contribution to preventing nosocomial infection.
Seminar Diagnost Pathol 24(4):217-226, 2007

[原著(和文)]

大西山大,塩竈和也,野々山 剛,小出 直,堤 ェ.
褥瘡から劇症型A群レンサ球菌感染症にいたり死亡した1例.
日本褥瘡学会誌9(2):203-209,2007

大西山大,堤 ェ.
胃瘻挿入部の過剰肉芽に対してステロイド外用剤塗布が有効だった2例.
治療89(8):2545-2548,2007

大西山大,塩竈和也,堤 ェ.
水道水残留塩素濃度の創傷治癒への影響.
治療89(11):3121-3125,2007

[著書(和文)]
堤 ェ
完全病理学.東京.学際企画,2007
第1巻:血液疾患-118ページ
第2巻: 産婦人科疾患-98ページ
第3巻:消化管疾患-162ページ
第4巻:肝・胆・膵疾患-97ページ
第5巻:呼吸器疾患-125ページ
第6巻:循環器疾患- 64ページ
第7巻:腎・泌尿器・男性生殖器疾患-121ページ
第8巻:神経・筋疾患-119ページ
第9巻:内分泌・代謝・乳腺疾患-96ページ
第10巻:皮膚疾患-169ページ
第11巻:骨軟部疾患-70ページ
第12巻:眼球・耳疾患-57ページ

堤 ェ,鈴木 舞,塩竈和也,堀口英久,佐野壽昭,馬原文彦
日本紅斑熱の病理.ダニと新興再興感染症.SADI組織委員会編
東京.全国農村教育協会.119-127,2007

水谷泰嘉,堤 ェ
第9章感染症および寄生虫疾患:抗酸菌、真菌感染症、原虫、蠕虫感染症:翻訳.ルービン病理学.エマニュエル・ルービン編、鈴木利光ほか監訳
東京.西村書店.369-412,2007


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