ネットワーク使用のガイドライン

(ネットワークでのエチケット「ネチケット」について)

ネットワークは使い始めると非常に便利なものです。あまりに便利なため、あなたもネットワークの向こうにいる不特定多数の人々に,知らず知らずのうちに迷惑をかけているかもしれません!

日本においてネットワークは急速な勢いで規模を拡大している最中です。そのため、インターネットを使い始めたばかりのビギナーが多くを占めています。それに伴う種々の問題が発生して参りました。これはひとえに、ネットワーク使用者のモラルが確立されていないことが原因である場合が多いようです。

ネットワーク利用の歴史の先行している組織では、同じような問題に早くから悩まされて来たようです。そこでは関係者の地道な努力により、組織全体のモラルが確立されつつあります。これにならって我々も早急に、個々の利用者のモラルのレベルを上昇させ、組織内活動のさまざまな局面で有効に働くようになる事を目指す必要があります。これには利用者個人の努力に期待する以外方法がありません。ネットワーク利用のモラルとは、突き詰めて言えば、利用者個人の「自由」と「責任」の自覚以外,何者でもないのですから。

  1. 電子メールの使用にあたって
     電子メールは非常に便利なものです。非常に気軽に相手に連絡する事ができます。電話のように相手の時間を束縛することもありません.
     それでは、どんどん電子メールを使えば良いか? と言うとそれはちょっと考えものです。相手も電子メールを使って日々の活動を行っているでしょう。そうでなくても,日常の業務で忙殺されているかもしれません。その際、その人にとって優先度の低いメールが多数届いた場合、どのような気持ちになるか考えてください。より重要なメールを見落とす可能性も発生するでしょう。これは、発信者だけが気がつかないだけの「電子メールの暴力」に近いところがあります。また、返事が来なかったと言って、再度メールを送るのも考えものです。あげくのはて、返事が来なかったと言って、苦情のメールを送る人も多々みえます。これは本人の自覚が無いところに、問題を複雑化する原因があります。
  2. メーリングリスト/ネットワークニュース(電子掲示板)を使用するにあたって 
     多くの人に自分の意見を聞いてもらったり、あるテーマについて議論する事は楽しい事ではあります。その過程である問題が解決したり、発展があるかもしれません。 では、これを不特定多数の人に自分の意見を書いて,電子メールで送り付けるのは正しい行為なのでしょうか? 言うまでもなく、これも「電子メールの暴力」であり、まともな社会人であるならば深く慎むべき事です。元来、このようなコミュニケーションを実現する機能の一つとして、「メーリングリスト」と「ネットワークニュース」という機構が存在します。それを利用する際に注意すべき点は、これから発言しようとする内容が、そのメーリングリストやネットワークニュースのグループにふさわしいかどうかを考える必要があります。これは、「1.電子メールの使用にあたって」の場合と同じように、本来の使用目的からはずれた内容に対して、それを迷惑と感ずる 人も必ずいるからです。

     特に組織内ネットワークにおいて全部署(全ユーザー)に対する緊急連絡用メーリングリストを運用している場合、システム停止のお知らせ、緊急連絡以外の内容を投稿するのはふさわしくありません。このように不特定多数の人に自分の意見を書くような場合は,できうる限りネットワークニュースを使用するようにしましょう。もし議論したいテーマのニュースグループが存在しなければ、新しいニュースグループ作成を提案してみるのも1つの方法です。
     また、比較的少ないメンバーを対象とした特定の内容に関する連絡の場合は、自分でメーリングリストを作成するのもよいでしょう。
  3. WWWについて
     インターネットに接続された組織の中には、個人のホームページを自由に作成し公開できる機構を採用しているところもあります。ここに個人・団体のアピール(主張・成果)を作成し公開する事は非常に良い事です。しかし、内容は組織の運営するWWWサーバーとしての品位を考慮し作成せねばなりません。現在、社会問題となっている「公衆道徳および一般社会通念に反する内容」はこれを厳しく排除せねばなりません。特に、現在すべてのページを検閲するのは困難な場合が多いので、利用者個人の節度ある行動が望まれています。
  4. ネットワーク上での文章(文字)を通じた人との付き合い方
     現在のネットワーク上での人とのコミュニケーション手段は、電子メール/ネットワークニュースに代表されるように、文章(文字)を通じて行われます。このコミュニケーション手段の弱点は、相手の顔が見えない為、文章表現が不十分であった場合、本人が意図していなかった内容に誤解され、無意味な論争に発展する事が多々あります。また、文字を使った意志疎通の際、他人の文章の引用を用いての議論となり、「揚げ足取り」になるケースも多々あり、話本来の目的から大きくはずれてしまう事があります。よって、慣れないうちは、「書いた文章をすぐ投稿するのではなく、一晩待ってから翌日投稿する」のも有効な方法です。不幸にして論争になった場合も、特定の個人および、組織に対する誹謗中傷も極力避けるべきです。批判よりは、「こうすればいいのでは」という建設的な意見を指向するのが良いでしょう。ところが、そのような提案も、発言者の知らない相手の事情が考慮されていない場合が多くあり「的外れな」提案である場合がほとんどです。その結果、反応がないからと言って腹を立てるのは考えものです。もし、相手の目に入っていれば、その提案が将来に何らかの形で反映される可能性があります。
  5. 署名について
     電子メールおよびネットニュースの最後にその文章を書いた人の署名(氏名・所属・連絡先)を書く場合が多いようです。これは、その文章に対する責任を明確にする点で意味があります。この点が「ハンドル名」という匿名を使用するケースの多いパソコン通信との大きな違いです。多くの場合は、この署名が文章の内容に対する責任の所在を保証し、説得力を付加しますが、問題のある場合もあります。特に、日本レベル・世界レベルのネットワークニュースにおける発言の場合、不特定多数の人に読まれる為、特に注意が必要です。あなたの発言に組織名の付いたの署名をつけた際、対外的に、その組織を代表しての発言という誤解を受ける可能性もあります。残念ながら、現在、この問題を解決する有効な手段はありません。利用者個人の細心の注意が必要となります。
  6. セキュリティ対策について
     セキュリティ対策の程度とネットワークの利用し易さは裏腹の関係にあります。一旦ネットワークが破られれば、ネットワーク管理者は責任上それなりのセキュリティー対策を施す以外に方法がなく、往々にしてネットワークの使い易さを損ないます。セキュリティの維持は、ネットワークの設計・管理面(ファイアーウォール(防火壁)の設置等)でのみ実現される事ではなく、利用者の一人一人のセキュリティー意識の高さにより実現されます。最も重要なセキュリティー対策は、個人の「パスワード」の管理です。例えば、パスワードに簡単な単語や人の名前を使用しない事や、定期的にそのパスワードを変更する事です。「ユーザーID」と同一な「パスワード」を使用したり、一つのアカウントを複数の人で共用するのは論外です。ネットワークを利用しないにもかかわらず、名刺に自分の電子メールアドレスを書くためだけの、幽霊ユーザーも、重大なセキュリティーホールとなり得ます。一旦誰かのパスワードが破られれば、そのマシンに登録されている人々すべてのデータはもちろん、その気になれば、組織内の全てのマシンのパスワードを調査するプログラムを仕掛ける事が可能となります。よって、上記のような自分のパスワード管理のずさんな利用者は、「クラッカー」の破壊行為に対して、組織全体の利用者のデータを危険にさらす片棒を担いでいると言って良いでしょう。個人のパスワードを守る事は、その個人だけの問題ではなく、そのネットワークを共用利用している全ての人に対する義務となります。

  7. まだネットワークを使用していない人との付き合い方
     ネットワークは特殊なものではありません。使っているから優位に立っているとか、使っていないから時代に取り残される というものでもありません。特に、最近のマスコミのネットワークブームを煽り立てる態度には疑問を感じずにはおられません。もし、あなたの周りにネットワークを使用していない人がいた場合、「今の時代,ネットワークを使えて当然だ」と言って、いたずらに相手の不安をかき立てるのは正しい態度ではありません。ネットワークは必要な人が個人の活動の補助手段の一つとして使うべきです。
     また、ネットワークに興味を持った人があなたの前に現れたならば、ここで述べた「ネットワークのエチケット」をまず教えてあげるようにしましょう。それでも、その人がネットワークを使ってみたいと考えるなら、できうる限り使用法を教えてあげたいものです。そのような繰り返しが、ネットワークモラルの向上につながり、組織の活力を上昇させ、次世代の真のインフラストラクチャーの発展につながっていくと思われます。